EVベンチャー、充電インフラ1000台を既築マンションへ

EVベンチャーの「テラモーターズ」は、4輪EV(電気自動車)向けの充電インフラ事業「Terra Charge(テラ・チャージ)」を始める。まずは既築マンションに、テラモーターズが導入費用を負担して1000台の導入を目指す。世界的なEVシフトに乗り遅れ気味の日本の状況を変え、普及への起爆剤とする狙いだ。(オルタナ副編集長・長濱慎)

使用イメージ。スマートEVコンセントに、ユーザーが車載充電器を接続する(写真:テラモーターズ)

日本のEVシフトへの先行投資としてリスクを取り事業をスタート

「テラ・チャージ」は既築マンションの管理組合を対象に、設備費と工事費をテラモーターズが負担し実質0円での導入をサポートする。既存のEVコンセントにIoT機能を持たせた「スマートEVコンセント」(1台あたり1〜2万円)によって低コスト化を図る。

居住者は専用のモバイルアプリを用いて、充電の予約から決済までを行う。管理組合は、管理画面を通して居住者の利用履歴を確認できる。テラモーターズはホテルや商業施設への充電インフラの普及も考えており、モバイルアプリにはそれらを検索する機能も付与する。

当面は既築マンションへ1000台の導入が目標だが、将来的にはディベロッパーと協力し新築への普及も視野に入れる。マンションは日本の住宅の40%を占めるが、充電インフラが不十分なことがEVの普及を妨げている。マンションをターゲットにしたのは、この問題解決の一翼を担うためだ。

「欧州では新車販売の20%以上がEVで、ホテルや商業施設で当たり前に充電ができる。米・中・印を含め世界的なEVシフトが進む中、立ち遅れている日本でも急速に普及するタイミングが必ず来る。その時に備え、当社があえてリスクを取って先行投資に踏み切った」

テラモーターズの徳重徹・取締役会長は3月29日の発表会見で、こう意気込みを語った。

テラモーターズは2010年にEVベンチャーとして設立。インドではEリキシャ(商業用EV三輪車)と電動2輪を年間約2万台販売。EV産業の振興に向けて、インド政府とも連携しているという。

日本でも状況は変わりつつある。トヨタが2030年に350万台のEV販売を掲げ、ホンダも脱エンジンを宣言しソニーとのEV共同開発を打ち出した。徳重会長のいう「その時」は、意外に近いかもしれない。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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