「RE100」達成ヘ 再エネを安定調達

UPDATER × 花王

新たな再エネ電力の調達スキームとして「コーポ レートPPA」が注目を集めている。発電事業者から 直接、環境価値の高い再エネ電力を長期的・安定的に 調達できることから、脱炭素を目指す企業の採用が相次ぐ。その仕組みやメリットを、2022年2月に調達をスタートした花王の事例を交えて紹介する。

コーポレートPPAのイメージ(UPDATER資料を基にオルタナ編集部で作成)

■市場に連動しない非FIT電力

コーポレートPPA (Power Purchase Agreement)では、企業が発電事業者と5〜20年の電力購入契約を結ぶ。電気事業法により、小売事業者も加えた3者での契約となる。コーポレートPPAのメリットは、再エネ電力を長期的かつ安定的に調達できることだ。「安定的」は、量と共に「価格の安定性」という意味も含む。

一般的な再エネ電力である「FIT(固定価格買取制度)電力」は、国のルールによって卸電力市場の価格と連動する仕組みになっている。そのため、火力発電所で使うLNG(液化天然ガス)などの価格変動の影響を受け、電気料金の高値が続いている。

これは、電気料金を負担する企業にとって悩みの種だ。せっかく脱炭素に向けて再エネ電力を拡大しようにも、市場の影響を受けるFIT電力ではコストがかさむことになりかねない。

これに対し、コーポレートPPAでは市場価格に左右されない「非FIT電力」を扱う。日本の再エネ価格は海外に比べるとまだ高めだが、今後LNGなどの価格が上がっていく可能性を考えれば、将来的な価格競争力を期待できる。

「脱炭素やRE100(※1)の目標達成に向けて、自分たちで積極的に再エネを調達していこうという企業が増えてきました。こうしたニーズにマッチした選択肢として、コーポレートPPAへの注目が高まっています」と、UPDATER(みんな電力)の真野秀太ソリューション営業部長は語る。

UPDATER(みんな電力)真野秀太ソリューション営業部長

■カーボンゼロを40年までに目指す

コーポレートPPAをいち早く採用した1社が花王だ。22年2月、静岡県の太陽光発電から本社(東京・中央)への供給がスタートし、近いうちに奈良県(2カ所)と兵庫県も合わせた計4カ所からの供給が始まる。

当初は本社ビルの使用電力の約30%を賄う予定だったが、現時点では約50%を賄えると見ている。残りの50%については再エネ由来の非化石証書を活用し、100%再エネによる電力調達を実現する。

花王本社は、100%再エネによる電力調達を実現(写真:花王)

花王は2040年にカーボンゼロ、50年にカーボンネガティブを目指す。このゴールに向けて「スコープ1と2(※2)を合わせたCO2排出量(絶対量)を2030年までに55%削減(17年比)」という目標を打ち出した。

21年6月には「RE 100」(※)に加盟し、30年までに使用電力の100%再エネ化を宣言。さらなる再エネの利用拡大に向けて、海外を含む拠点でもコーポレートPPAの活用を検討していくという。

「当社は工場で自家発電太陽光の設置を進めてきました。花王の象徴的な場所である本社にも再エネ電力を広げるため、コーポレートPPAに着目しました」と、大河内秀記購買部門間接材戦略ソーシング部ユーティリティ担当部長は導入の経緯を説明する。

花王の大河内秀記購買部門間接材戦略ソーシング部ユーティリティ担当部長

花王に電力を供給する4カ所の太陽光発電は、発電事業者のジェネックスとみんなパワー(UPDATERの出資会社)がコーポレートPPAのために新設したものだ。新たな電源を開発し、その数が増えれば再エネの発電比率が高まる。そこから企業が電力を購入すれば既存の火力を代替することになり、国全体の脱炭素につながる。

「契約を1件締結すれば1カ所の太陽光発電所が増え、再エネの拡大に直接寄与できることにもメリットを感じています。もちろん発電所は事業者に設置していただきますが、まるで自分たちが新しく発電所をつくったような感覚を得られました」と、大河内部長は印象を述べる。

再エネを通した地域貢献も視野に

どの発電所の電力をどのぐらい利用したかは、トラッキングシステムで可視化する。見えにくい電力のトレーサビリティを見えるようにすることで、企業は指定の発電所から再エネの電力を調達したことを証明できる。

この仕組みは「顔の見える電力TMを提供」というモットーのもと、UPDATERが家庭部門で取り組んできたブロックチェーン技術が可能にしたものだ。

発電所の環境アセスメントも重要で、地域の合意を得た発電所を選ぶ必要がある。花王に電力を供給するのは、環境に配慮した溜池水上設置型や野立て型の太陽光発電だ。環境価値に加えて産地価値を付与できることも、企業がコーポレートP P Aに注目する理由となっている。

「コーポレートP P Aを広げて再エネの拡大に貢献し、将来的には何らかの形で地域貢献にも取り組めればと思います」と、大河内部長は今後の展望に期待を寄せた。

地域貢献につながるコーポレートP P Aの一つの形が、ソーラーシェアリング。これは農地に太陽光パネルを設置し、農業と再エネ発電を同時に行う仕組みだ。全国に42万ヘクタール以上ある耕作放棄地の活用策として国や自治体も普及を後押しし、UPDATERは企業に積極的に紹介している。


UPDATERが推し進めるソーラー シェアリングは、「みんな大地」のプロジェ クト名のもと有機農業などとともに普及 に取り組んでいる(写真:UPDATER)

※1「RE100」は、使用する電力の 100%再エネ化を目指す国際的 な企業連合

※2「スコープ1」は自社内での排出 ( 主に化石燃料の燃焼)、「スコープ 2」は社外から購入するエネルギー(主に電力)による排出

(PR)(オルタナ68号から転載)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #SDGs#自然エネルギー

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