経産省は4月1日、二酸化炭素の排出量を市場で売買できる「排出量取引」のルールなどを議論するプラットフォームに440社が加盟したと発表した。加盟企業のCO2排出量は約3億2千万トンに及び、日本全体の排出量の28%に相当する。今後、脱炭素を「成長戦略」にすべく、排出量取引やCO2フリー製品の表示方法などを官民で議論する。実証事業を経て、2023年4月に本格稼働することを目指す。(オルタナS編集長=池田 真隆)
経産省は2月1日に「GXリーグ基本構想」を公表し、賛同企業を3月31日まで募集していた。GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略称で、このリーグに賛同した企業と排出量取引の目的やルールなどを話し合い、実証事業を経て2023年4月から本格稼働を目指す。
3月31日までに賛同企業は440社が集まった。全排出量は日本全体の排出量の約3割に相当する。
賛同企業は大手からスタートアップまで業種や規模は多岐に渡るが、「2050年カーボンニュートラルと整合的な2030年削減目標を掲げているか」「グリーンな製品の調達・購入で需要を創出し、消費市場のグリーン化を図るか」――などに賛同することを条件にした。
賛同企業の多くは日系企業だが、野心的な目標を掲げる外資も一部いる。世界の自社事業所からの温室効果ガスの排出を2025年までにゼロに、2030年までにバリューチェーン全体でカーボンネガティブ(排出する温室効果ガス以上に吸収する状態)を目指す英製薬大手のアストラゼネカは3月30日に加盟した。
同社の光武裕・ジャパンサステナビリティディレクターは、「日本では日系企業と連携を図るスキームが少なかった」とし、野心的目標の実現に向けた連携を探りたいと話した。
特に「スコープ3」への対応やカーボンネガティブの実現にはあらゆる産業との連携が不可欠だ。「集まった企業とルールづくりから話すことができるので、様々な知見を学ぶ場としても期待している」(光武氏)。
■脱炭素を「成長戦略」に、官民でルール作り
日本では排出量取引に関しては明確なルールはなく、企業間どうしで市場を通さずに行っていた。そのため取引価格が見えていなかった。経産省としては、これをN対Nの形にして、取引価格を可視化することを目指す。
ルールをつくることで、野心的な目標を掲げる企業の取り組みを市場が正当に評価できるようにして、投資を促すことが狙いだ。
GXリーグを担当している経産省環境経済室の梶川文博室長は「脱炭素を『成長戦略』にしたい。生活者視点に立ってカーボンニュートラルな世界観を考え、その上でルールを作る」と意気込む。
日本はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の賛同機関数が748(3月17日時点)で世界最多を誇る。梶川室長は脱炭素化を促進する技術力も高く、「ポテンシャルは高い」とする。その一方で、「アピールに課題がある」とし、GXリーグで仕組みを話し合い脱炭素への投資を活性化することを狙う。
気候変動やサステナビリティに関する「基準」は欧州から世界に広がる。この流れについて梶川室長は、「欧州基準に乗ることが勝ち筋なのか」と疑問を投げる。政府のルールに企業が乗ることも違うと言う。
「欧州では気候変動など環境分野の基準作りに、民間企業やNGOなどが主体となってかかわっている。ルールメイキングの段階から官民で連携しないと市場はつくれない」(梶川室長)
公募で集まった賛同企業とは4月から6月にかけてルールをつくり、6月後半から8月に実証実験に参加する企業を公募、8月から2023年1月まで実証実験、2023年4月から本格稼働という流れで進む。