セールスフォース・ジャパン 遠藤理恵・執行役員インタビュー

2021年9月にバリューチェーン全体で「ネットゼロ」を達成したセールスフォースはこのほど、排出量を可視化し「ネットゼロ」への移行を支援するクラウドサービスを開発した。新しくなった東証の「プライム市場」に上場する企業には気候変動対策の開示が一層求められ、そのニーズに応える。日本法人でサステナビリティ部門の責任者を務める遠藤理恵・執行役員は「取引先をパーパスで選ぶ時代になった。データドリブンでESG領域の取り組みを進めていくことが重要だ」と語る(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)

遠藤理恵・セールスフォース・ジャパン執行役員 サステナビリティ&コーポレートリレーション担当

――2021年9月にバリューチェーン全体(スコープ1,2,3)で「ネットゼロ」を達成しました。これを達成している企業は世界でもまだ少ないです。脱炭素に注力する理由は何でしょうか。

気候危機が切迫しているという危機感を強く持っています。2030年まで10年を切り、「The Critical Decade(危機の10年)」といわれていて、次の世代に豊かな資源を残すためには発想を転換することが重要だと考えています。

セールスフォースの気候変動に対する取り組みは2013年から本格的に始まりました。事業運営を再生可能エネルギーで行うことを目指すイニシアティブ「RE100」にコミットして、全データセンターを再エネで稼働させました。

2017年には「再エネ導入」「排出ガスの削減」「炭素クレジットによるオフセット」などで業務における排出量の「ネットゼロ」を達成しました。2021年には、事業活動における再エネ100%化を実現し、バリューチェーン全体(スコープ1,2,3)で「ネットゼロ」を達成しました。

ネットゼロを達成するために行った主な取り組みは3つあります。まず、1.5℃目標に向けたネットゼロに公式にコミットしました。そして、排出量を削減しながら、2030年までに世界全体の排出量を自社のバリューチェーン全体(スコープ1、2、3)で約50%削減、40年にほぼゼロにすることを掲げました。

排出削減が困難な部分に関しては、信頼性、インパクト、コベネフィット効果 (複数のベネフィット効果)の高い再エネやカーボンクレジットを購入することで、排出量を相殺しました。

――排出量などを可視化する「Net Zero Cloud(ver.2.0)」を3月にリリースしました。主な特長は、GHGプロトコルに基づきスコープ1~3の温室効果ガス排出量の管理、ネットゼロまでの対応状況をダッシュボードで可視化、支社や調達先のデータを一元管理——などです。このサービスの強みは何ですか。

強みとしてはセールスフォースという会社そのものにあると考えています。パーパス(存在意義)を持っていること、そして、戦略を実行して「ネットゼロ」を達成したことで、選んでくれると思っています。

特にいまはB2CでもB2Bでも、「パーパスをしっかり持った企業と取引したい」というニーズは高まっています。

――取引先を「パーパス」で選ぶようになったということですね。

サプライヤーに関するアンケートの種類も増えて、環境だけでなくESGすべての領域に関して聞くものもあります。大手企業はそれらのアンケート結果を踏まえて、取引先を精査するようになりました。

セールスフォースも2025年度までにスコープ3排出量の60%を占めるサプライヤー各社にSBTの設定を求め、同時にサプライヤーの目標達成を支援する投資も行います。

脱炭素の流れが加速するにつれ、NGOの企業を見る目も厳しくなっています。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も「ウォッシュと言われないための施策をすべき」と強調しています。

ウォッシュと言われないために、企業にとって何が必要なのか。それは、正確にデータを取り、データドリブンでESG領域の取り組みを進めていくことだと考えています。

テクノロジーカンパニーの特徴を活かして、二酸化炭素、廃棄物、水などをそれぞれ管理し、過去だけでなく未来のことを知りたい投資家向けの情報も分かりやすく表示できます。

気候危機が切迫しているという危機感を持って、発想を転換することが重要です。もっともインパクトがある方法とは何かを見極めて、多くの人と議論しながら取り組みを進めていくべきだと考えています。