ウクライナ戦争で顕在化した「ネット分断」問題

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ウクライナ戦争が「ネットの分断化」という問題も浮き彫りにしている。スプリンターネット(splinternet)、サイバー・バルカニゼーション(cyber-balkanization)などと表現される問題だ。(もり ひろし)

現実世界だけでなく、ネットの世界でも情報の分断化が問題化している

ネットの分断化とは、広義には商業・政治などの都合のため「障壁なき情報アクセスが難しくなる状況」をいう。商業的な分断例をあげると「かつてガラケーとパソコンとで接触可能な情報空間が実質別だった状況」などがある。

直近で深刻な課題は政治を背景にした分断だ。「中国が運用する検閲システム」や「ロシアが主権インターネット法(2019年)に基づき行う規制」などがネット環境を国ごとに分断しつつある。

またウクライナ侵攻を受けて大手SNSがロシア市場から撤退したことも、「プロパガンダへのカウンターが伝わりにくくなる」などの副作用をもたらした。

専制・独裁への復古傾向を受け、近年ネットの自由度は世界規模で低下しているという(参考:Freedom on the Net 2021/Freedom House)。「開かれたネット環境」の理念は危機に瀕している。

morihiroshi

もり ひろし(新語ウォッチャー)

新語ウォッチャー。国語辞典の新項目執筆を中心に活動。代表的な連載に「現代用語の基礎知識」の流行観測欄(2010年版~)など。執筆記事一覧

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