【連載】政策起業家とは何者か(2)

「政策起業家」について世界の研究者たちの考えをまとめた連載コラム第2弾です。前回は政策起業家の定義について触れました。今回は政策起業家の属性とスキル、主な戦略についてご紹介します。(三井 俊介・NPO法人SET理事長)

政策起業家の戦略や要素、行動特性などはまだ乱立している状態だと言えます。ケアニーは「三つの習性」、クリストポロスは「四つの行動特性」、ビュッヒャーは「八つの典型的な機能と特徴」などとしてまとめています。

今回は様々な先行研究を見た上で、ミントロムの「5つの属性、7つのスキル、5つの戦略」をご紹介したいと思います。

ミントロムによると、政策起業家の属性(蓄積されるもの、内在するもの。簡単に手に入るものではない)としては、「大志」「社会的洞察力」「信頼性」「社会性(社交性)」「粘り強さ」が挙げられています。

スキル(学べるもの)としては、「戦略的思考」「チームビルディング」「エビデンスの収集」「議論すること」「複数の傍観者(グループ)を巻き込むこと」「交渉力」「ネットワーキング」を挙げています。

具体的に行う戦略としては、(1)問題のフレーミング(2)ネットワークの活用と拡大(3)アドボカシー連合との協働(4)模範を示して、リードする(5)変革プロセスのスケールアップの5つです。

ミントロムを筆者翻訳 *クリックすると拡大します

一つずつ少し詳しく記述していきます。

[属性(Attributes)]
■大志(ambition)・・・将来のリターンを期待して様々な資源を投資する。大志はその行動の意欲を生み出す。そのエネルギーが信頼性を高め、他の人に活動に参加してもらうものとなる。
■社会的洞察力(Social Acuity)・・・人々がどのように問題を捉え、何が懸念や行動の同期になっているか理解する。それによって効果的なアドボカシーや人脈ネットワークを構築する。
■信頼性(Credibility)・・・強力な支援の連携を構築する上で必須。
■社会性(Sociability)・・・他者に共感し、ニーズを理解する能力を持っていなければならず、その上で大切な素質。
■粘り強さ(Tenacity)・・・例えその目標がどこにも見えなくなったとしても、より大きな目標に向かって努力し続けようとする意志。

[スキル]
■戦略的思考(Strategic thinking)・・・明確な目標を念頭においてスタートすること、特定の問題に対処するために適用可能な政策解決策の「ツールボックス」を大きく増やしておくこと、他者と協力して効果的な方法を開発しておくこと、自分の提案を支持してもらうための障害を減らすことが重要。
■チームビルディング(Team building)・・・他者と協調性があり、地域の政策文脈の中でうまくつながっている方が目標達成率が高い。
■エビデンスの収集(Collecting evidence)・・・既存の証拠がどのようなものであれば、問題についての特定の観点を前進させるのに役立つのかを認識すること。特定の政策革新を推進するための戦略的に利用できる新しい証拠を収集する方法を見つけること。
■議論すること(Making arguments)・・・証拠をもとに効果的な議論をすること。
■複数の傍観者(グループ)を巻き込むこと(Engaging multiple audiences)・・・影響力を拡大するために多くのグループに訴求していく必要がある。幅広いメッセージを維持しながら、異なるグループに異なるポイントを強調して巻き込んでいくことが大切である。
■交渉力(Negotiating)・・・政策変更をすることで、今まで利益を得ていた人から対立抵抗を招くことになる。政策起業家は政策変更をすることで利益を得る人からの支持を得ていく必要がある。また政策変更することで不利益を被る人からの抵抗を減らすことも必要。
■ネットワーキング(Networking)・・・利害関係者の継続的な会話のグループでもある。市役所や議会などでの正式な議論は、その周辺での対話の構造化に役立つ。

[戦略]
■問題のフレーミング(Problem framing)・・・複数の観点のものをどのような「問題」とするか、それによってどう議論で目立たせるか、どのような個人やグループから注目を集めていくかが決まる。効果的な問題のフレーミングには、社会的洞察力と交渉力の組み合わせが必要である。「危機が目の前に来ていることを示唆する方法で証拠を提示する」「現在の政策の失敗を強調する方法を見つける」「問題の直接的な範囲を超えた関係者からの指示を引き出す」などがある。
■ネットワークの活用と拡大(Using and expanding networks)・・・自分たちの人脈ネットワークが自分たちのイニシアチブをサポートするために利用できるスキルと知識の蓄積地だと理解している。(強い紐帯と弱い紐帯とどちらも必要ある。)
■アドボカシー連合との協働(Working with advocacy coalitions)・・・チームの構築やネットワークの活用などと密接に関係している。すでにある複数のアドボカシー連合(団体)と強調的に協力して、まとめ、政策変更の支援を取り付けていく。
■模範を示してリードする(Leading by example)・・・政策決定者の間でのリスクを減らす行動の一つとして行う。
■変革プロセスのスケールアップ(Scaling up change processes)・・・一つの司法管轄区で望まれる変化を確保し、他の司法管轄区での変化を支える支柱とし、その変化を利用することが必要である。

社会起業家と呼ばれる人たちと似ている部分も多くあるのですが、アドボカシー連合との協働などは特徴があるかと思います。

ただし、日本の文脈においてはどのような組織や団体がアドボカシー連合に当たるのかなどは十分に検討していく必要があります。


参考:Mintrom, Minchael. (2019) ”So you want to be a policy entrepreneur?” Policy Design and Practice, Vol.2, no.4 pp.307-323