NGO・市民らの株主、三井住友FGに「脱化石」求める

国際環境NGO 350.org Japanは4月22日、三井住友フィナンシャルグループに行った株主提案について記者会見を開いた。同団体のメンバーと市民からなる個人株主5人が参加し「自分たちの声を直接届けることが、化石燃料プロジェクトに多額の資金提供を行うメガバンクの方針を変える原動力になる」と、意欲を見せた。(オルタナ副編集長・長濱慎)

会見に先立ち、三井住友FG本社前でアピール

■市民が株主として金融機関に声を上げはじめた

三井住友FGへの株主提案は、4月11日に提出した。中期(2025年)・短期(30年)の温室効果ガス削減目標を含む事業計画の策定と、新規の炭鉱やガス田開発からの撤退を求めた。6月に予定の株主総会に向け、投資家に賛同を広げていく。

三井住友FGは、赤道原則(エクエーター原則※)下の化石燃料プロジェクトへの融資件数が世界最多の46件(2016年〜21年9月)ある。2021年は若干下がったものの、化石燃料に対する20年までの融資・引受の額は毎年増えていた(国際環境NGOバンクトラック調べ)。

※赤道原則とは、大規模プロジェクトへ融資する際に環境や社会へのリスクを考慮する金融業界の国際的な自主的ガイドライン。

メガバンクへの株主提案は、3行めとなる。すでにみずほフィナンシャルグループと三菱UFJフィナンシャルグループには、複数の環境NGO(※)が化石燃料からの撤退を求める株主提案を行ってきた。

※気候ネットワーク、マーケットフォース、レインフォレスト・アクションネットワーク、350.org.Japan

その結果、みずほFG(2020年・株主賛同約34%)は、石炭火力向け与信残高を2050年度までにゼロにする定量目標(その後40年度に修正)を設定。三菱UFJFG(2021年・株主賛同約23%)は、投融資ポートフォリオの2050年ネットゼロ目標を打ち出した。

350.org.Japanの横山隆美代表は、「株主提案によって銀行の行動は確実に変わってきた。個人株主の背後に、提案に共感する多くの市民がいることを認識してもらえているのでは」と、行動の意義を述べる。同団体のメンバーは、21年から個人株主としての提案も行っている。

今回の三井住友FGへの株主提案には、350.org Japanメンバー以外の個人株主3名も参加した。一般市民がメガバンクに対して気候変動対策に関する株主提案を行うのは、日本初だ。

神奈川・横須賀の山崎鮎美さんは「地元で石炭火力の建設が始まっており、住民から大気汚染が怖いという声が上がっている。1つ言えるのは、この石炭計画は大規模なビジネスで、お金の流れが止まれば計画を止めることにつながると思った」と想いを語る。

大学生の冨永徹平さんは「気候変動は立場の弱い人ほど深刻な影響を受ける。このアクションには株を買う資金が必要で、自分はたまたま経済的に恵まれていた。株主となって気候変動対策の強化を求めることには、大きな意義があると思っている」と、言い切る。

2児の母親である笠井貴代さんは「子どもを寝かしつけながら、水不足や食糧不足になっていく世界を想像して泣いていた。北海道・帯広に住んでいる母親が、これまでにない暑さで苦しんでいる。気候変動を加速させるのも止められるのも私たち次第」と、決意を述べた。

3名とも金融の知識があるわけでなく、試行錯誤で手続きを行い株を購入したという。今や企業にとって重要なステークホルダーとなったNGOや投資家の背後には、こうした市民の切実な想いがある。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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