仏大統領選テレビ討論:論理のマクロンと情のルペン

4月24日の大統領選決選投票を前に、20日夜、マクロン大統領と極右政党「国民連合(RN)」のルペン党首の2人の候補がテレビで対決した。購買力の向上、防衛、環境などのテーマで3時間、討論を繰り広げた。ルペン氏は生活にあえぐ国民に寄り添う姿勢で視聴者の情に訴え、マクロン氏は5年の大統領経験を基に、論理でルペン氏の公約に反論した。最終的な世論捜査ではマクロン氏が優位に立った。(パリ在住編集委員=羽生のり子)

決選投票候補者のテレビ討論を伝える「ル・パリジャン」紙
決選投票候補者のテレビ討論を伝える「ル・パリジャン」紙

ルペン氏の「必需品100項目の消費税をゼロにする」という発言に対して、マクロン氏は「消費税をゼロにして、一番得をするのは大手流通店だ。それより、低所得者層に小切手を発行する方が効果的だ」と反論した。

ルペン氏は「主権はフランス国民にある。上院はフランス国民の代表ではないから、フランス人が国民投票で憲法も変えられる」と表明した。マクロン氏が「国会を無視している」と反論したが、ルペン氏は「民主主義が何を意味するかを見直さなければならない」と持論を続けた。

討論会はマクロン氏に有利に働いたようだ。22日18時発表の最終世論調査では、マクロン氏57%、ルペン氏43%で14ポイントの差がついた。

しかし、棄権や白紙投票を考えている有権者がどう動くかは不明だ。ルペン氏は討論会翌日から北仏で集会を行い、討論会の時とは打って変わった激しさで「国民よ、立ち上がれ」と訴えた。

4月22日、パリ郊外のモントルイユ市役所前で、極右が政権を取ったら外国人排斥が始まると訴える人たち。市会議員が「ルペンは最悪」と書いた紙を手にしている
4月22日、パリ郊外のモントルイユ市役所前で、極右が政権を取ったら外国人排斥が始まると訴える人たち。市会議員が「ルペンになると最悪の事態に」と書いた紙を手にしている

米大統領選でヒラリー・クリントン氏が敗れてトランプ大統領が誕生したように、大方の予想が外れることもある。調査報道で知られるウェブ媒体「メディアパルト」は、マクロン政権とルペン氏のスキャンダルをすっぱ抜いてきたが、決選投票で棄権したい人に、マクロン氏に投票するよう呼びかけた。

「マクロン氏に入れたくない気持ちはわかるが、棄権すれば、ルペン氏が大統領になる可能性がある。そうなればあらゆる手段を使って国会、デモ、メディアを抑圧し始めるだろう。マクロン氏とルペン氏の間には根本的な違いがある」と訴えた。

hanyu

羽生 のり子(在パリ編集委員)

1991年から在仏。早稲田大学第一文学部仏文卒。立教大学文学研究科博士課程前期終了。パリ第13大学植物療法大学免状。翻訳業を経て2000年頃から記者業を開始。専門分野は環境問題、エコロジー、食、農業、美術、文化。日本農業新聞元パリ特約通信員、聴こえの雑誌「オーディオインフォ」日本版元編集長。ドイツ発祥のルナヨガ®インストラクター兼教師養成コース担当。共著に「新型コロナ 19氏の意見」(農文協)。執筆記事一覧

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