オルタナ総研統合報告書レビュー(13):花王

花王「統合レポート2021」の特徴は、ステークホルダーに向けて、事業や戦略、業績報告に加え、コーポレート・ガバナンス体制など非財務情報と財務情報を連携させ、総合的なストーリーとしている点です。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

花王統合レポート2021

花王は、2019年4月にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表し、ESG経営に舵を切りました。

花王は2030年までに、グローバルで存在価値ある企業 「Kao」をめざしており、2030年までに持続可能でよりよい世界をめざす国際目標であるSDGs(Sustainable Development Goals) を見据え、花王は3つの方針を立てました。

それが「持続的社会に欠かせない企業になる」「投資して強くなる事業への変革」「社員活力の最大化」という3つの方針であり、これを企業価値創造ストーリーに仕立て上げています。

「社員活力の最大化」については、人事制度改定の背景を次の様に述べています。

1.花王は、会社にとって最大の資産は「人」だと考えています。

2.2021-2025年度中期経営計画「K25」という目標を達成するために、新事業・新製品開発におけるイノベーションを加速し、多様なバックグラウンドや専門性を持つ人財が、部門や国、組織を超えて共創し、能力と個性を最大限に発揮できる組織への改革を行ないます。

同社は人事制度として、 OKR(Objectives and Key Results)を導入しました。その狙いを次の様に説明しています。

1.OKRは組織の生産性最大化を目的とし、 社員の挑戦を引き出して組織が一丸となって目標を達成する風土を作るための組織マネジメント制度です。

2.従来のKPI(Key Performance Indicator)は、目標の100%達成を前提とした為、 社員は到達し得る範囲内の現実的な最終目標を定めがちで、組織として革新的な成果を挙げることが難しい仕組みとなっていました。

3.OKRでは、最終目標を高く設定し、目標達成度が60%程度であれば最低限の目標は達成したと見なし、100%達成することで革新的な成果を生み出したと見なされます。

4.OKR制度では、各社員が 「ESG」「Business」「One team and my dream」の3つの視点でOKRを考え、ESG貢献、事業貢献、協働や他部門貢献などの幅広い分野で、自らを成長させることへのチャレンジを促します。

5.各社員が設定したOKRを社内のイントラネット上に掲載し、OKRに関する活動を透明化することで組織の壁をなくし、開かれたフラットな組織風土の醸成を目指します。

6.リーダーシップを持って活動に取り組む人財への機会提供や、部門や国を超えたロールモデルの構築、仲間同士の対話も促進していきます。

地域営業の担当者が「自分の地域でESGに関連した社会貢献活動を生み出して全国レベルにまで広げる」との目標が出始めていると聞きます。

次回花王「統合レポート2022」では、OKR制度導入の効果、課題を特集されてはいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #CSR#SDGs

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