「1.5℃目標」達成に向け、中小企業のSBT認定増える

気候変動に関する国際的イニシアティブ「SBT(科学と整合した目標設定)」の認定を受ける日本の中小企業が増えてきた。これまで同イニシアティブは大手企業が先行していたが、サプライチェーン全体の温室効果ガス削減に向け、企業の大小を問わず認定を受けるケースが珍しくない。5月20日には中堅企業の山陽製紙(大阪府泉南市、原田六次郎社長)が、日本の製紙業として初めてSBTの認定を受けた。(オルタナ副編集長・長濱慎)

5月23日現在、3063社がSBT認定を取得、日本企業は247社(画像:SBTホームページ)

SBTは「サイエンス・ベースト・ターゲット」の略称で、「パリ協定」の目標達成に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を意味する。国際NGOのWWF(世界自然保護基金)、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、WRI(世界資源研究所)、国連グローバル・コンパクト、による共同イニシアチブである「SBTi」が運営している。

企業は「パリ協定」が定めた、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃未満に抑えることを念頭に、温室効果ガスの削減目標を策定。SBTiから認定を受ける。

2022年5月23日現在、SBT認定を受けた日本企業は247社で、うち86社が中小企業だ(SBTホームページによる)。従来のSBTはスコープ1、2、3の全てで削減目標を設定するが、中小企業版SBTではスコープ3が除外される(下記表を参照)。

このほど中小企業版SBT認定を取得した山陽製紙は、1928(昭和3)年創業の古紙リサイクルメーカー。再生紙を用いて鉄鋼や電線の梱包用クレープ紙や、セメント袋・資料袋などを製造している。

同社は2008年、環境省が定めた環境経営システムに関する認証・登録制度「エコアクション21」の認定を受け、20年には使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指すイニシアチブ「再エネ100宣言Re Action」に参加した。

そして今回、温室効果ガス排出量の中長期削減目標を策定。年間4.2%ずつを減らし2030年に42%削減(20年比)という目標を打ち出し、中小企業版SBT認証を取得した。「年間4.2%」は、SBTiが奨励する数値だ。

中小企業版SBT通常SBT
対象・従業員500人未満
・非子会社
・独立系企業
とくになし
目標年2030年公式申請年から
5年以上先、10年以内
基準年2018、19、20年
から選択
最新のデータが
得られる年
削減対象範囲スコープ1、2スコープ1、2、3
目標レベル■スコープ1、2:
1.5℃・少なくとも年4.2%削減
■スコープ3:
特定の基準値なし
■スコープ1、2:
1.5℃・少なくとも年4.2%削減
■スコープ3:
少なくとも年2.5%
環境省資料「中小企業向けSBTの概要」を基にオルタナ編集部で作成」

・スコープ1:自社内での排出(主に化石燃料の燃焼)
・スコープ2:社外から購入するエネルギー(主に電力)による排出
・スコープ3:自社以外のサプライチェーンでの排出

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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