オルタナ総研統合報告書レビュー(15):富士通

富士通グループは「富士通グループ統合レポート2021」で「AI倫理に関する取り組み」は、サステナビリティマネジメントの「人権対応」という文脈で語っています。海外では巨大IT企業による寡占状態やAIによるプライバシー侵害、世論操作、公共監視などを背景に、2016年頃から「AI倫理」が議論されていました。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

富士通グループの統合レポート2021

富士通グループは2019年の「富士通グループAIコミットメント」策定に続き2022年2月、AI倫理推進の司令塔として「AI倫理ガバナンス室」を新設しました。2019年、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスをAI活用の観点で説明した「富士通グループAIコミットメント」を策定しました。

欧州発のAI倫理に関するグローバル・フォーラム「AI4People」が打ち出した原則を取り入れたコミットメントです。

「富士通グループAIコミットメント」の5原則とは、「1.AIによってお客様と社会に価値を提供」「2.人を中心に考えたAI」「3.持続可能な社会を目指すAI」「4.人の意思決定を尊重し支援するAI」「5.企業の社会的責任としてAIの透明性と責任重視」の5点です。

海外では巨大IT企業による寡占状態やAIによるプライバシー侵害、世論操作、公共監視などを背景として、AIへの規制強化の議論が高まっており、2016年頃からAI倫理が語られるようになりました。

AIには、「学習させるデータにバイアスがあると、AIが導き出す結果に偏見や差別的バイアスが生じてしまう」という特性があります。この特性を理解しないままAIを使えば、「バイアスを是正できず、不公平や不平等を放置したまま意思決定する」事象が起きてしまいます。

その様な課題を踏まえ、富士通グループは、AI倫理を次の様に考えています。

1.AIは人間社会の発展と進化、SDGsの達成にも貢献できる道具です。健康、福祉、気候変動の抑止、平等社会の実現にも貢献できます。

2.AI倫理ガバナンスを推進して、倫理的な観点の必要性を従業員にしっかりと浸透させていく必要があります。

3.AIはますます社会に浸透し、消費者が気付かないところで使われており、今このタイミングで、当社からもより強くAI倫理の重要性を世に訴えていく必要があります。

4. 最先端テクノロジーの社会浸透・信頼確保の実現を加速させるため、2022年2月にAI倫理推進のグループ司令塔として、体制整備や戦略の推進、より積極的な外部発信を進める組織「AI倫理ガバナンス室」を立ち上げました。

「富士通グループ統合レポート2022」においては、2019年の「富士通グループAIコミットメント」策定から2022年の「AI倫理ガバナンス室」新設の経緯やAI倫理の基本的考え方を特集されてはいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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