「ゴミ拾いの歌」を皆で歌い、ゴミのない村を目指す

ミャンマーの僻地・無医村「ミャウンミャ」から

「今年はゴミを1つも村からなくしたいんだよね。特に子どもたちが落すゴミを」。これは約1年前、私たちが支援するミャウンミャ地区・トーイ村の地域健康推進員たちから出た言葉です。「もうこんなにきれいになっているのに、これ以上にきれいにできるのかな」と驚いたものですが、その結果はいかに。 (NPO法人ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会「MFCG」代表理事・医師・気功師・名知仁子)

村の所々に村人が置いたゴミ箱

■少数民族の言葉で衛生の大切さを伝える

私たちMFCGがトーイ村で活動を始めたのは、2016年。約500名(91世帯)いる住民の大部分は、手洗いの方法も知りませんでした。歯もほぼ全員が、塩か炭で磨いていました。そんな保健衛生という概念さえない状況の中で、活動が始まりました。

前回の連載で紹介した通り、村の衛生を担うリーダー的存在が地域健康推進員です。私たちは村人の中から地域健康推進員を育てて、自分たちで村の健康を守れるようになってくれることを目指しています。最終的なゴールは村人が自立し、MFCGが必要なくなる世界です。

トーイ村では、3名の地域健康推進員が誕生しました。ここはカレン族の一つであるサコーカレン族の村で、お年寄りの中にはサコーカレン語しかわからない人も多くいます。彼らは貧しくて学校に行けなかったため、ビルマ語(ミャンマー語)の読み書きできないのです。

だから、地域健康推進員の存在が大きな意味を持ちます。彼らは私たちから学んだ約20種類の保健衛生に関する知識や、トイレを設置する重要性、トイレ蓋の大切さをサコーカレン語で伝え、手洗いや歯磨きの指導も行なってくれます。私たちにとっても、彼らはこの上なく信頼でき頼りになる存在です。

■「生まれて初めてゴミ拾いをした」

毎年3月には、各村の地域健康推進員に年間目標を掲げてもらいます。それから毎月ミーティングを行い、目標の進捗状況や、課題がある場合は改善策を話し合います。トーイ村が2021年3月に掲げた目標は、22年3月までに村からゴミをなくすことでした。

これを聞いて驚きました。すでにトーイ村は、十分すぎるほどきれいになっていたからです。ここでゴミ拾いの環境整備プロジェクトを始めたのは、2017年で、たった20分で満杯になった黒いゴミ袋が41袋も集まったのです。「生まれて初めてゴミ拾いをした」と口にする村人も多く、やると決めたらすぐ始める行動力に感激しました。

それから地域健康推進員が音頭を取って村の要所要所にゴミ箱を設置し、衛生環境が飛躍的に改善されました。今では、各家庭にもゴミ袋があるそうです。22年3月までにゴミをなくす目標はまだ達成できていませんが、もう十分にきれいな環境になっています。

塩か炭を使っていた歯磨きについては歯磨き指導に取り組んだ結果、ほぼ全ての村人が歯ブラシを使用するようになりました。

村人は自分たちで「ゴミ拾いの歌」をつくり、教会などで歌い、村中に広めています。これは毎回思うのですが、本当に人間の可能性は無限大です。彼らは単に、今まで学ぶ機会が無かっただけだったのです。そのご縁を、MFCGが作っているのだと。皆さんもぜひこの歌をお聞きください。

※「ゴミ拾いの歌」はこちらからお聞きになれます。

※MFGCは6月12日に設立10周年を迎えることができました。これを記念して、Tシャッツを現地とお揃いで作りました。売り上げは全て現地の活動に使わせていただきます。詳しくはこちらです。(日本国内へ配送可能です) 

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Satoko Nachi

名知 仁子

名知仁子(なち・さとこ) 新潟県出身。1988年、獨協医科大学卒業。「国境なき医師団」でミャンマー・カレン族やロヒンギャ族に対する医療支援、外務省ODA団体「Japan Platform」ではイラク戦争で難民となったクルド人への難民緊急援助などを行う。2008年にMFCGの前身となる任意団体「ミャンマー クリニック菜園開設基金」を設立。15年ミャンマーに移住。

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