武田薬品工業はこのほど、温室効果ガス削減目標の前倒しを発表した。スコープ1、2についてはネットゼロ目標年を2040年度から2035年度に、スコープ3については2040年度までの削減目標を50%からネットゼロに引き上げた。このコミットメントを後押しする一翼を、ミレニアル世代とよばれる20〜40代はじめの従業員が担っている。(オルタナ副編集長・長濱慎)

脱炭素を訴える活動の一環として、国会議員へのアドボカシー(働きかけ)も行った

・スコープ1:自社内(主に化石燃料の燃焼)による排出

・スコープ2:社外から購入するエネルギー(主に電力)による排出

・スコープ3:自社以外のサプライチェーン全体の排出

■グローバル製薬企業と連携「スコープ3ネットゼロ」へ

武田薬品のクリストフ・ウェバーCEOは目標前倒しについて、人々の健康と気候危機は密接に関係しているとして、こうコメントした。

「今回の取り組みの加速は非常に野心的な目標ではありますが、共存する地球に対して、私たちが責任を果たし倫理感を持ち続けるために、もっとできることがあるという思いから生まれたものです」

武田薬品は、2020年から全社横断的な取り組みとして「CAPS(クライメート・アクション・プログラム・フォー・サイト)」を進めている。これは脱炭素に向け、製造、研究開発、販売、オフィスなどグローバルの各拠点でロードマップを作り、それぞれに必要な施策を行うものだ。

CAPSでは、拠点や国・地域ごとの削減状況を可視化するツールも開発した。これによりコミットメント達成への進捗を確認でき、迅速な投資の決断や施策が可能になる。

脱炭素を担当する川口洋平コーポレートEHS・リードは、見通しをこう語る。

「再生可能エネルギーの拡大により、スコープ2のネットゼロについては達成が見えてきました。スコープ1については、まずは冷凍機やボイラーなどの空調設備を高効率なタイプに更新し、トータルのエネルギー使用量を削減し、さらにその脱炭素化を検討していきます」

川口洋平コーポレートEHS・リード

医薬品業界では医薬品の品質を守るため、研究開発プロセスや工場の製造プロセスにおける温度・湿度管理が厳格に決められている。そのためエネルギー消費量の半分程度を占める空調の脱炭素化が、スコープ1削減のカギを握っている。

排出量の87%を占めるスコープ3については、サプライヤーを含むバリューチェーン全体の取り組みが欠かせない。もっとも削減が困難な領域だが、武田薬品は2040年までの削減目標を50%からネットゼロへ引き上げた。

「武田薬品はEnergize(エナジャイズ)という、グローバル製薬企業9社とともに脱炭素を進めるプログラムを立ち上げました。製薬企業は共通のサプライヤーを利用していることが多く、協働で再エネ導入を支援するプログラムなどを進めることで、スコープ3のネットゼロを目指します」(川口氏)

武田薬品は日本企業として唯一「エナジャイズ」に参加

■ウェビナーや週1のSNSで脱炭素を社内浸透

全社的なコミットメントを従業員一人ひとりが共有することも大切だ。日本では社内兼業制度「タケダ・キャリア・スクエア」を通して、脱炭素の取り組みを社内外に発信するメンバーを募った。

同制度は原則として3~6カ月の期間限定で所属している部門以外の仕事を経験し、スキルアップやキャリア形成につなげることを目的に2020年にパイロットを実施し、2021年2月から正式にスタートした。医療政策・ペイシェントアクセス統括部の今井亮翔(りょうか)渉外主席部員は、応募時の様子を振り返る。

「環境意識が高い従業員を若干名集めようと募集をかけたところ、2週間で予想を超える20名以上が集まり、嬉しいサプライズでした。『自分の子どもの未来のため』、『気候危機で貧困に苦しむ人々を目の当たりにした』など応募の理由はさまざまでしたが、一人ひとりから真剣さを感じました」

今井亮翔(りょうか)渉外主席部員

検討の結果、工場から1人、広報から1人、営業から2人の計4人の兼業メンバーが決定。いずれも20代〜40代はじめで、2021年11月から22年4月まで活動した。