JR旅客会社のグリーン車が乗り放題となる「フルムーン夫婦グリーンパス」。年齢の合計が88歳以上の夫婦が対象だが、「男女」の夫婦しか認められないことがSNSで波紋を呼んでいる。(オルタナ副編集長=吉田広子)
「フルムーン夫婦グリーンパス」は、2人の年齢の合計が88歳以上の夫婦で、同一行程で旅行する場合に利用できる特別企画乗車券だ。1981年に発売し、JR各社が販売している。婚姻届けの有無について、ウェブサイトの購入案内では特に明記されていない。
稲森としなお・三重県議会議員が6月21日にツイートした内容によると、同性パートナーがいる同氏の知人の問い合わせに対し、JR東日本は「『フルムーン夫婦グリーンパス』はこれまで男女のご夫婦を対象に設定してまいりました」とし、「現時点では、同じ性別のパートナーのお客さまにつきましては『フルムーン夫婦グリーンパス』のご利用はできかねます」と回答したという。
稲森県議の知人は自治体が発行する「パートナー証明」を持っていたようだが、認められなかった。
JR東日本は、LGBTQ への取り組みの評価指標「PRIDE (プライド)指標」のゴールド評価を2017年から5年連続で受賞した先進企業だ。
独自の「同性パートナー制度」を導入し、結婚休暇や扶養手当、福利厚生制度、介護休職など、同性パートナーにも適用している。パートナーの子(継子)に対しても制度を認め、養育休暇など取得することも可能だという。
JR東日本は、オルタナの取材に対し、「フルムーン夫婦グリーンパス」の利用を「男女」の夫婦に限定した理由を次のように説明した。
「『フルムーン夫婦グリーンパス』については、ご夫婦でグリーン車を利用してご旅行をお楽しみいただくためにJR6社で設定している商品となっております。同性婚の方については、『フルムーン夫婦グリーンパス』の利用資格要件に該当しないという整理にしております。同性婚に対する一部自治体等の取組み(渋谷区等)は、現時点で『法律上の婚姻とは異なるもの』として位置付けられるため、同性婚の方については、『フルムーン夫婦グリーンパス』の利用資格要件に該当しないという整理にしております」
今後については、「当社単独で発売している特別企画乗車券で、『夫婦』を対象に販売しているものはないため、『フルムーン夫婦グリーンパス』については、国等の法律整備状況等を注視しながらJR6社で議論していきます」とした。
※JR東日本の回答を追記しました(2022年6月23日17時30分)