安全を守る手袋、初のエコマーク

■ミドリ安全×GSIクレオス

手袋や安全靴、ヘルメットなど安全衛生保護具の製造・販売を行うミドリ安全は8月、初めてエコマークを取得した耐切創性手袋 「カットガードV」シリーズを発売する。繊維と工業製品を中心とする専門商社のGSIクレオスが提供するサトウキビ由来の植物性ポリエチレンを使用し、ライフサイクルを通して50%のCO2 削減を可能にする。製造現場で働く人々の手指を守る手袋に、脱炭素という新たな価値が加わった。

サトウキビ由来の原料を活用した植物性ポリエチレン素材を用いた「カットガードV」シリーズ。ライフサイクル全体のCO2半減を可能にした

■労災から手指守る「耐切創性手袋」

エコマークは、製造から廃棄までのライフサイクルを通して環境への負荷が少なく、 環境保全に役立つと認められた商品につける環境ラベルだ。 1977年に環境庁(現・環境 省)の呼びかけで設立した、公益財団法人「日本環境協会」が 認定する。

耐切創性(たいせっそうせい)手袋「カットガードV」シリーズは、素材にサトウキビ由来の原料を含有した植物性ポリエチレンを使い、 耐切創性手袋としてはじめて エコマークを取得した。

耐切創性手袋は主に、薄い金属板やガラス、刃物などを扱う製造現場で使われる。労災事故の約4分の1を占める手指のケガ(※)を未然に防 ぎ、従業員の安全を守るには欠かせない。ミドリ安全の谷口圭一営業部長は、こう語る。

※「休業4日以上と4日未満の死傷災害の比較」(平成22年労働安全衛生総合研究所)による

「多くの企業でサプライチェーンを含めた人権重視の取り組みが進んでおり、製造現場では従業員の安全確保が重要なテーマに なっています。こうした背景を受け、耐切創性手袋は当社の手袋ラインナップの中で最も急速にシェアを伸ばしています。数を多く販売する製品に環境対策を施せば、それだけ大きな温室効果ガスの削減効果を期待できます」

谷口圭一・ミドリ安全セフティ&ヘルス統括部グローブ営業部・営業部長

■「本州1周分」 CO2 50 %削減

GSIクレオスによると、植物性ポリエチレンを使った手袋と従来品とを比較すると、ライフサイクル全体で50%のCO2を削減できるという。同社は、その効果について身近な例で次のように述べている。

「1トンのポリエチレンから2万5000双の手袋ができ ます。仮にこれを植物性ポリエチレンに置き換えると、約2.2トンのトンのCO2を減らすことができます。この量は、ガソリン 車で約7900キロメートル(本州1 周の距離に相当)走った場合 に出るCO2の量とほぼ同じ (※)です」

※中部カーボン・オフセット推進ネットワークによる

中島康次・GSIクレオス ファイバーソリューション部・部長

製造現場における手袋は、 安全を守る必需品であると同時に消耗品でもある。休憩時間以外は常に手にはめられ、 確実な安全性を担保するために2〜3日で新品に交換するのが一般的だ。そのため大量の廃棄品が出ることは避けられず、焼却時に出るCO2を半減できるメリットははかり知れない。

GSIクレオスは、エコマークの取得にあたり原料の選定が大きなポイントだったと振り返る。

「環境保全の視点から、枯渇性資源の使用抑制にもこだわりました。サトウキビ由来の ポリエチレン素材は、手袋用途で耐切創性を確保できると判明したため、原料を石油などからサトウキビ由来に置き 替えることとしました。製品化にあたっては、樹脂・原糸 メーカーなどにもご協力いただき、品質上の課題をクリアし、エコマーク認証取得へつなげることができました」


■環境性を高め コスト据え置き

ポリエチレンはもとより軽くて丈夫という特性があり、 釣り糸や野球場のネットなどに広く使う。手袋用の素材としては毛羽立ちしにくいこともメリットで、埃を嫌うIT機器やハイブリッド車の大量生産が始まった2000年代から急速に普及してきた。

今後 E V( 電気自動車)へシフトする自動車の製造現場などでは、ポリエチレン製の手袋がスタンダードとなるの は確実だ。そこに脱炭素という、新たな価値が加わった意義は大きい。

開発にあたっては、強度テストも入念に行った。「カットガードV」シリーズでは欧州のEN388という耐切創 性試験の規格を用いてテストを繰り返し、安全基準をクリ アした。

「用途が耐切創性手袋ということで、安全にかかわるスペックは何よりも重要です。 ポリエチレンの原糸は海外で生産していますが、品質改良と調整を重ねながら量産体制を確立することができました。 生産現場も含めて、皆が安全性と環境性の両立という目標を共有できたことが大きかった と思います」( GSIクレオス・松尾治嘉課長)

松尾治嘉・GSIクレオス マテリアル部 営業第二課・課長

ミドリ安全の谷口圭一営業部長は、もう一つのポイントとしてコストを挙げた。

「これまで環境性とコストはトレードオフになりがちでしたが、今回は植物由来の原料 を使用しながら従来の耐切創 性手袋と同等の価格に抑えることができました。手袋は年 間を通して何十万双という単 位でご購入いただく製品なので、お客さまにとっては朗報 でしょう」

植物性ポリエチレンを使っ た耐切創性手袋「カットガード V」シ リ ー ズ は、2 0 2 2 年8月から発売される。他の 手袋についても、順次環境性 に優れた原料に切り替えてい くという。ミドリ安全の商品開発力と、 GSIクレオスの繊維への知見。互いの強みを活かしたパートナーシップがなければ商品化は実現しなかった。

2社はともに「今回の取り 組みはゴールでなくスタートである。引き続き協働しながら新たな用途を開拓し、カー ボンニュートラルにつながる 可能性を広げていきたい」と、 将来を見据えている。

(PR)(オルタナ69号から転載)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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