「企業の長期的な価値創造を」ESG情報開示研究会

日立製作所、トーマツ、三井三友トラスト・アセットマネジメントなど企業、監査法人、機関投資家、会計事務所など115社・団体が参加する「ESG情報開示研究会」の活動報告会が30日、オンラインで開かれた。2年間の活動成果を踏まえ、非財務情報開示のあり方を企業、投資家、基準設定団体別に提言した。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

日本企業の情報開示レベルは世界をリードする可能性

同研究会は、北川哲雄氏(青山学院大学名誉教授)が代表理事・研究会座長を、増田典生氏(日立製作所)が共同代表理事を務めている。


北川哲雄代表理事

増田典生共同代表理事(日立製作所)

「ESG情報開示研究会活動報告書2022」で示された非財務情報開示の在り方の内、企業、投資家への提言は次の通りである。

■企業に向けた提言

1)企業は自社固有の長期的な価値創造ストーリーを説明することが求められる。

2)企業は自社がどのような価値を重視しているのかを、企業自らの言葉で明確に表現すべきである。

3)マテリアリティは、企業が重視する価値に従って、企業へのインパクトと企業にとって重要なステークホ ルダーへのインパクトも考慮して特定されるべきである。

4)企業は特定したマテリアリティの価値創造に与える影響を明らかにすべきである。

5)企業が長期的な価値創造ストーリーの実現に向けて設定する指標は、企業自らが設定するとともに、設定に至った考え方や指標の見方を分かりやすく説明することが求められる。

6)企業が長期的な価値創造ストーリーの実現に向けて投資家の共通認識となっている指標を選定しない場合は、その理由を説明することが望ましい。

7)非財務情報の在り方について企業は投資家と積極的にダイアログを行い、投資家が必要としている非財務情報を理解し開示に努めるべきである。

■投資家に向けた提言

1)投資家は企業が策定した固有の長期的な価値創造ストーリーを理解することが求められる。

2)投資家は企業のマテリアリティの判断基準を理解した上で、マテリアリティに取り組むことが企業の長期的な価値創造ストーリーの実現に資するかどうかという視点で評価することが求められる。

3)投資家が企業の選定・設定した指標を利用する場合には、単純に指標のみで利用するのではなく、企業が説明する指標の選定・設定に至った考え方や指標の見方について理解した上で利用することが重要である。

4)投資家は企業が投資家の共通認識となっている指標を選定していない場合、選定していない理由を把握した上で企業を評価することに努めるべきである。

5)投資家は企業の非財務情報をどのように利用しているのか説明することが求められる。

6)投資家は非財務情報の調査機能を充実させるべきである。

北川代表理事は、「国内企業の情報開示レベルは質的に高く、世界をリードする可能性があると期待できる。機関投資家の分析レベルも飛躍的に上がっており、2022 年 7 月から始まる 3 期目の活動も充実させたい」と強調した。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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