国内13社、海外では有名企業も取得「Bコープ」とは

食品ロス削減をビジョンに掲げるクラダシ(東京・品川)は、このほど「Bコープ認証」を取得した。社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度で、日本では13社目となった。世界ではパタゴニアやダノンなどの有名企業を含む5000社以上が取得し、幅広いステークホルダーとの関係を大切にする企業の指標となっている。(オルタナ副編集長・長濱慎)

「Bコープ」取得とともにブランドイメージも一新したクラダシ

■「捨てられる食品に新たな価値」のビジネスモデルが評価ポイントに

クラダシは2014年の創業で、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI(クラダシ)」を運営する。賞味期限が近づいたり規格外になったりした食品を企業から仕入れ、最大97%オフで販売し、収益の一部を社会貢献活動に寄付する。

自治体との連携やこども食堂支援の実証実験も行う(食品ロス削減の「連携ハブ」担い、こども食堂支援も)など、「日本で最も食品ロスを削減する会社」をビジョンに活動の幅を広げている。

SDSs(持続可能な開発計画)がゴールの一つに「2030年までに食品ロスを半減」を掲げたこともあり、クラダシのビジネスは拡大。22年6月現在サイトの会員数は35万人、取引社数は990社、売上高成長率は前年同期比230%を記録した。7月6日には、新生企業投資など5社から、第三者割当投資による総額6.5億円の資金調達を発表した。

クラダシは、6月に「Bコープ」認証を取得したことも発表。これは米ペンシルバニア州に本部を置く非営利団体B Lab(Bラボ)が運営する認証制度だ。ガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、カスタマーの5分野からなる150以上の質問に回答し、80ポイント(満点は200ポイント)以上を取ると認証される。

Bは「ベネフィット(社会に利益を還元)」のことで、Bコープとは株主だけでなく(上場企業の場合)、従業員、ユーザー、地域社会、地球環境などあらゆるステークホルダーの利益を考える企業を意味する。

河村晃平・取締役執行役CEOは、クラダシの認証取得についてこう語る。

「捨てられようとしている食品に新たな価値を付けて再流通させ、社会貢献に結びつけるビジネスモデルがユニークだと評価されました。従業員の7割近くが女性という、ダイバーシティも評価のポイントになったようです」

■海外ではパタゴニア、ダノンも取得

国内企業でBコープ認証を取得したのは、クラダシで13社目。22年6月現在の取得企業は以下の通り(カッコ内は取得年)。

1)シルクウェーブ産業(群馬・桐生):新素材開発(2016年3月)

2)石井造園(横浜):公共工事、植栽、緑地管理など(16年5月)

3)フリージア(埼玉・児玉郡):デイケアサービス(16年11月)

4)日産通信(東京・江東):移動体工事、アクセス工事など(18年1月)

5)泪橋ラボ(東京・台東):国際協力、保健・社会福祉の調査(18年7月)

6)ダノンジャパン(東京・目黒):乳製品の製造・販売、輸入(20年5月)

7)エコリング(兵庫・姫路):買取事業、ブランド品専門店運営販売(21年6月)

8)レドリボング(神奈川・川崎):ITシステム開発(21年12月)

9)シグマクシス・ホールディングス(東京・港):コンサルティング、事業投資(22年1月)

10)mayunowa(横浜):化粧品製造・販売、スパ運営(22年3月)

11)ファーメンステーション(東京・墨田):化粧品・雑貨・食品原料開発(22年3月)

12)オシンテック(神戸):ソフトウェア発行者、コンサルなど(22年3月)

13)クラダシ(東京・品川):社会貢献型ショッピングサイト運営(22年6月)

(Be The Charge Japan資料などを基にオルタナ編集部が作成)

2022年に入って一挙に5社が認定を受けたことは注目に値する。Bコープ認証取得支援コンサルタントとして活動する岡望美さんは、こうコメントする。

「国内で申請に向けて動いている企業が10社近くあり、この数か月で相談・問い合わせも増えました。ウェブ上で取得を公言している企業・サポートしている企業等々を含め、今後1~2年以内に20~30社単位でさらに増えると見込まれます」

その背景については、こう分析する。

「グローバルには新型コロナによる働き方・在り方の見直し、気候変動、人権問題などがより注目を浴びるようになり、投資家から「ESG」で評価される大企業に限らず、スタートアップや中小企業界隈で、環境や社会に優しい企業を目指したいという潮流が来たといえます」

「日本において、初めて取得企業が出たのは2016年になりますが、そのあたりで認知し、ずっとあたためてきたものを実行に移すといった経営者も複数おり、主要メディアにBコープ関連の記事が出始めたことも影響していると思います」

世界では欧州、米国を中心に80ヵ国以上で5000社以上が取得。中小企業やスタートアップが社会課題の解決とビジネス成長の両立を目指して取得するケースが多いが、パタゴニア、ダノン、オールバーズ、ボディショップなど有名企業も名を連ねる。

Bラボの英国支部が2020年に同国内で行った調査では、中小企業全体の年間成長率が3%に対しBコープ取得企業は24%。女性の活躍は54%に対し82%、コミュニティ重視は50%に対し95%という結果となった。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..