12月にカナダで最終会合が開かれる国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)に向け、日本の立場から生物多様性とビジネスを考えるフォーラムが7月3日、オンラインで行われた。「脱炭素」の目標に向けて企業は本業で取り組んでいるのに比べ、指標や目標がまだ明確ではない生物多様性の課題を企業関係者などが共有した。生物多様性が本業と関係するにもかかわらず、日本企業では社会貢献の一環として扱われ、「ギャップを感じる」との指摘もあった。こうした課題を乗り越え、COP15の議論で日本の存在感を示せるかどうかが今後、問われよう。(オルタナ編集委員=関口威人)

■最終会合は12月にモントリオールで

COP15は当初、2020年に中国・昆明で開かれる予定だったが、コロナの影響で度々延期されたり、部分的な開催にとどまったりしている。今夏に開かれる見通しだった最終会合も、12月にカナダ・モントリオールで開催されることに決まった。

2010年に日本開催されたCOP10で採択された「愛知目標」に替わる新たな国際目標(ポスト2020生物多様性枠組)の議論は大詰めを迎える。2030年までに陸と海の30%の保全を目指す「30by30」目標のほか、新型コロナをはじめとした人獣共通感染症に対処する「生物多様性と健康」の地球規模行動計画の策定などが焦点となっている。

■論点は「自然への影響評価の開示義務付け」

COP15を前に、フォーラムは「ポスト2020生物多様性枠組の議論から考えるビジネスにおける<ネイチャーポジティブ>」と題して開かれた。国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)が主催する「生物多様性国家戦略を考えるフォーラム」の一環で、NPO法人アースデイ・エブリデイが企画・運営した。

6月にケニア・ナイロビで開かれたCOP15の作業部会に参加した同法人理事の宮本昌育さんは、ポスト2020枠組み案でビジネスに関係する「行動目標15」について、作業部会では企業や金融機関が自然への影響などを評価し、開示することを義務付けるかどうかなどが論点と報告した。

自然への影響評価の枠組みを構築するTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のメンバーである原口真さんもフォーラムに出席。TNFDは気候変動に関するTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の生物多様性版とされているが、「企業の担当者はTCFDへの対応で精いっぱいで、TNFDまで(理解や対応が)追いついていない」と明かした。

さらに「日本企業で生物多様性というとCSRの担当になってしまうが、本来は調達などの本業に関わるもの」とも指摘。宮本さんは「社会貢献と本業のギャップを埋めるべきだ」として、企業側の認識の転換を促した。

■まずは企業が自然に対する影響と依存度を把握する

フォーラム「ポスト2020生物多様性枠組の議論から考えるビジネスにおける<ネイチャーポジティブ>」で
フォーラム「ポスト2020生物多様性枠組の議論から考えるビジネスにおける<ネイチャーポジティブ>」で

環境省生物多様性主流化室の谷貝雄三室長は「気候変動は二酸化炭素という一つの指標で経済評価もできる。一方、生物多様性はもっと複雑で(指標化の)失敗の歴史も多いが、トライアンドエラーを繰り返して定量化するしかない」と述べた。

WWFジャパン生物多様性グループ長の松田英美子さんも、「まずは企業が自然に対する影響と依存度を把握することから(この分野の議論の)機運が高まる」とした上で、「自然影響のデータは先進国に集中しているが、企業の主な調達先は先進国以外。そうした現地でデータを集めるNGOや研究者とも連携してほしい」と呼び掛けた。