廃棄茎と古新聞100%使用、土に還る園芸用ポット

生花店や花を扱うイベントでは、日々大量の茎が廃棄されている。これを原料として活用し、フラワーロスの解消につなげる園芸用ポットの販売が始まった。茎と新聞古紙のみで作るため廃棄時は土に埋めて自然に還すことができ、プラスチックごみ問題解決への貢献も目指す。(オルタナ副編集長・長濱慎)

自治体が回収した古新聞に、粉末状にした茎5%を配合

循環型植物用ポットは「STEMN(ステムン)」の製品名で、6月から販売が始まった。花に関連したサービスを提供するJOURO(ジョウロ、長野県千曲市、青木善則社長)と、紙製品メーカーの山櫻(東京都中央区、市瀬豊和社長)が共同開発した。

「『どのぐらいの長さにお切りしましょうか』というさりげない一言で捨てられてしまう茎を何とかしたいという、ジョウロ・青木社長の想いからプロジェクトが始まりました。茎を資源としてとらえ、新たな価値を創り出そうと、紙製品開発にノウハウを持つ当社が協力して開発にのぞみました」と、山櫻エシカルプロダクト室の高野さんは振り返る。

原料の茎は花市場で回収し、乾燥粉砕して粉末状にする。それを水に溶かした新聞古紙に練り込み、金型で成形、乾燥させて製品化する。製造には「パルプモールド」という卵パックや緩衝材に用いる製法を用いて、強度と軽さを両立させた。茎と紙以外の原料は使用しておらず、土に埋めれば半年から1年で自然に分解される。

フラワーライフ振興協議会によると、生花店などでは仕入量の30〜40%が廃棄され、経済損失は年間1500億円にのぼるという。問題の解決には、まず過剰入荷などの流通経路を見直し、廃棄物の総量を減らすことが前提だが、発生してしまった廃棄物の活用も有効な選択肢となるだろう。

「STEMN(ステムン)」は花卸、生花店、園芸関連など花関連の企業に向けて、専用のウェブページで販売している。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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