国内フェアトレード市場は前年比20%増、人権が課題

■記事のポイント
①国内フェアトレード市場は売上前年比20%増、認証製品数34%増
②フェアトレード・ラベル・ジャパンがフェアトレードで最新報告
③消費者の「たまにエシカル」が一層の拡大のポイントに


認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(東京・中央)はこのほど、認証先のメーカーや流通業関係者を招き、フェアトレードの最新動向について報告した。人権デュー・ディリジェンスの義務化など背景に、国内でもフェアトレード市場が拡大し、国内のフェアトレード製品の売上高は前年比20%増の約158億円に上った。同NPOは、「さらなる拡大には、たまにフェアトレード商品を購買する層の拡大がカギを握る」とした。(オルタナ編集部=萩原哲郎)


フェアトレード商品の購買拡大に向けて議論

■世界で人権対応の義務化が進む

第14回ステークホルダー会合は、国際フェアトレード認証に賛同・参加する企業や団体などを対象に、最新動向や取り組みの共有・発表を行う場だ。

フェアトレードは南北の地域格差を解消する運動として始まった。認証基準は「経済的基準」、「社会的基準」、「環境的基準」の3つの基準がある。

昨今、国際社会で対応が加速しているのが「社会的基準」、人権に関する法整備だ。

世界では人権デュー・ディリジェンスの「義務」化が進む。欧州委員会は今年2月、企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令案を発表した。採択されれば、EU域内で活動する一定の条件を満たす内外の企業に対して、人権や環境への対応が義務化される。米国では6月にウイグル強制労働防止法が施行となった。新疆ウイグル自治区からの物品の輸入を原則禁止した。

日本政府は2020年に「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定。政府の取り組みを示すとともに、企業に対して人権デュー・ディリジェンスの導入を促した。経済産業省は今夏、人権デュー・ディリジェンスに関するガイドラインを策定する予定だ。

■拡大する国内のフェアトレード市場

このような社会動向に呼応するように消費者の購買行動にも変化が出ている。

フェアトレード・ラベル・ジャパンの潮崎真惟子事務局長は「2021年の国内フェアトレード市場の売上は前年比20%増の約158億円、認証製品は約34%増の1500点超になった」と報告。レストランやホテルなどの業務用での需要が伸びたほか、小売店でのフェアトレード商品取り扱いが拡大した。電子機器分野でのフェアトレード調達など、食品やコットン以外の対象商品の広がりもあった。

■「たまにエシカル」層の購買拡大が焦点に

今後、国内フェアトレード市場の一層の拡大にはエシカル非関心層の動向がポイントとなりそうだ。

トークセッションではCCCマーケティングの瀧田希氏と博報堂の永渕雄也氏が登壇。瀧田氏は「Tカードみんなのエシカルフードラボ」について紹介。今年3月には「エシカルフード基準」を作成し、Tカード利用者がエシカルフードを購入するとスコアが付与される仕組みをつくった。瀧田氏は「たまに買う人が1000人増えればソーシャルインパクトは大きい」と語った。

永渕氏は「生活者のサステナブル購買行動調査」2022年版の一部を紹介。22年3月の調査では前年と比較して、SDGsに対する認知が大きく伸長していることを明かした。「フェアトレードをどのように翻訳して消費者に伝えていくかが重要では」とも提言した。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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