メルカリが目指す「プラネット・ポジティブ」とは

記事のポイント
①メルカリはESG戦略の理念を「プラネット・ポジティブ」と表現
②フリマアプリを通して資源が世代を超えて循環する社会を目指す
③メルカリの衣類取引で、2021年は約48万トンのGHGの排出を回避

フリマアプリを展開するメルカリはESG戦略の理念として「プラネット・ポジティブ」を掲げる。地球資源の限界を意味する「プラネタリー・バウンダリー」の対になる言葉で、世代を越えて資源の循環を目指す。衣類の取引によって廃棄を防いだ効果を数値化し、ESGの視点で自社の価値を示した。(オルタナS編集長=池田 真隆)

メルカリは「プラネット・ポジティブ」を理念にESGに取り組む

メルカリは8月9日、2022年度版のサステナビリティレポートを公開した。同レポートは2020年度から公開しているが、今年度は初めて事業が環境に与える「ポジティブインパクト」を算出した。

一つ目のインパクトは衣類取引による効果だ。衣類を廃棄ではなく、循環させたことで廃棄によって生じるGHG排出を防いだ。2021年の1年間で取引された衣類の量から、その量は約48万トンに及ぶ。これは東京ドーム約200杯分の容積に相当する。

二つ目のインパクトは、ユーザーが衣類を出品したことで廃棄を防いだ効果を数値化した。出品の量から計算し、約4.2万トンの衣類廃棄を防ぐことに貢献した。日本で一年間に廃棄される衣類の総量が約48万トンなので、約8.8%に当たる。

メルカリは5つのマテリアリティ(取り組むべき重要課題)を特定した。そのうちの一つに「循環型社会の実現/気候変動への対応」がある。

同社の2022年度のGHG排出量は約3.8万トン。スコープ3が排出量全体の97%を占めた。そのうち、スコープ3のカテゴリー1(ソフトウェアやデータセンターの利用など)が約85%だ。

2030年度までにスコープ1と2で2020年度比100%削減、スコープ3で2020年度比で付加価値当たり51.6%削減という脱炭素目標を定めた。この目標で2023年6月までにSBT認定の取得を目指す。

環境省が出したサプライチェーン排出量の算定に関するガイドラインでは、メルカリのユーザー間の取引で生じる配送に関わる排出量は算定の「対象外」となる。だが、同社ではこの分野にも問題意識を持ち、「低炭素配送」の研究などに取り組む予定だ。

山田CEO「循環型社会で必要不可欠な存在へ」

「プラネット・ポジティブ」を打ち出したが、どのような意図を込めたのか。同社の山田進太郎CEOはサステナビリティレポートでこのように語っている。

「メルカリが『循環型社会で必要不可欠な存在になる』という、私たちの理念がより伝わるような言葉を以前から考えていました。『プラネタリー・バウンダリー』という言葉がありますが、これは人類が安全に生存できる地球資源の限界点を概念として表したものです」

「これに対してメルカリは、事業の成長を通じて地球環境に対し てポジティブなインパクトを生み出し続けていく存在でありたいという思いを込めて、『プラネット・ポジティブ』という言葉を用いることにしました」

「プラネット・ポジティブを追求することによって、限りある地球資源が世代を越えて共有される循環型社会が実現し、その基盤のもとに、あらゆる人が可能性を発揮できる社会をつくっていきたいと考えています」

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ESG#SDGs#脱炭素

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