東洋ライス「コメの価値を可視化し、農業を元気に」

日本人一人あたりのコメの消費量は年々減少し、全国各地で水田の耕作放棄が広がっている。そうしたなか、コメの総合メーカーである東洋ライス(和歌山市)は、コメが持つ本来の価値を「見える化」し、日本のコメ産業を盛り上げようと、コンソーシアムを立ち上げた。国立遺伝学研究所とも連携し、同社が開発した栄養価の高い「金芽米」の成分解析を進め、その健康効果を解明する研究も行う。

■コメの栄養価は精米技術で変わる

1961年に精米機メーカーとして創業した東洋ライスは、精米機器や米製品を開発・販売してきた。なかでも、同社が2005年に発売した「金芽米」は、健康意識が高まる消費者ニーズに応えたヒット商品だ。

「均圧精米法」で玄米の表面から少しずつヌカを取り除き、コメの表面に均等に「亜糊粉層(あこふんそう)」を残す

「金芽米」とは、東洋ライスが発明した「均圧精米法」によって精米された特殊な白米だ。均圧精米法では、玄米の表面からヌカを少しずつ均等に除去するので、玄米の皮と実の間にある「亜糊粉層(あこふんそう)」が残る。

亜糊粉層には、旨味や栄養成分が含まれるが、一般的な精米法では取り除かれてしまう。また、とぎ洗いすることで、亜糊粉層が流出しないよう「BG無洗米製法」(※)により、無洗米加工している。

※「B」はBran(ヌカ)、「G」はGrind(削る・研ぐ)の頭文字。肌ヌカの粘着力だけを利用して肌ヌカを取るので、工場から排水が出ない

「金芽米」は、コメの品種や産地を問わず、精製できるのが特徴だ。2015年には「金芽ロウカット玄米」、2020年には100%玄米由来のサプリメント「金芽米エキス」を発売した。

近年、「糖質制限ダイエット」が流行し、白米は肥満や糖尿病のリスクを高めるといわれ、ネガティブなイメージが強まってきた。玄米は健康に良いとされるものの、炊飯に苦労し長続きしなかったり、消化不良の原因になったりするなど課題もある。

東洋ライスの雜賀慶二社長は、「コメは本来単なる炭水化物ではない。コメには本来生薬機能が備わっており、加工の仕方次第でコメの価値は大きく変わる。多くの人に健康に良いコメをおいしく食べてほしいという思いで『金芽米』を開発した」と話す。

■保育園の「食べ残しゼロ」にも貢献

金芽米を給食に取り入れている中村学園大学(福岡市)の付属保育園では、「野菜100グラム以上、食塩相当量2グラム未満」の給食を提供し、「食べ残しゼロ」を目標に給食改善を行っている。

中村学園大学の森脇千夏教授(管理栄養士・医学博士)は、「『三つ子の魂百まで』とも言われるが、幼いころの栄養摂取はその後の健康状態に大きく影響する。保育園給食の使命は、子どもたちの正常な発育・発達を見守ること。子どもの健康に配慮した食を提供していきたい」と思いを語る。

森脇教授は2015年から給食改善を進めてきたが、初年度は年間200キログラムの食べ残しが発生した。「残食があるということは、必要な栄養素を取ってもらえていないということ。その事実に、大変ショックを受けた」と吐露する。

そこで、習慣的に摂取し、1日の総エネルギーの50%程度を占めるコメを見直すことにした。玄米特有の有効成分「ガンマオリザノール」に着目し、玄米食を検討したが、導入するには、炊飯設備の見直しや幼児の好みに合うかといった課題があった。そうしたなか、ある栄養に関する学会のブースで、「金芽米」に出合った。

「七分つき米」「白米」「金芽米」で食味試験を実施したところ、子どもたちの支持が最も多かったのが、「金芽米」だった。2016年4月に保育園給食に「金芽米」を導入することを決めた。

中村学園大学の付属保育園では、金芽米を取り入れた「野菜100グラム以上、食塩相当量2グラム未満」の給食を提供している。現在はほぼ残食がない

「『金芽米』そのもののおいしさがあるので、徹底した塩分調整ができている。現在はほぼ残食がない」(森脇教授)

保護者アンケートでは、「風邪をひかなくなった」「(嗜好が変わって)ジュースの量が減った」といった子どもの変化が寄せられた。インフルエンザや新型コロナウイルスの感染率も近隣の保育園と比較して、3分の1程度にとどまっているという。

■金芽米で「モミラクトン」や未知の成分を発見

コメの可能性を追及してきた雜賀慶二・東洋ライス社長

「東洋ライスは、『環境に良くて、美味しくて、自然栄養群が豊富で、消化吸収性が良くて、人々を健康にする』食品に加工する――ということを理念に掲げ、それを貫いてきた。健康的な食は、医療費削減にもつながる。だからこそ、コメが持つ本来の価値を『見える化』する必要があった」(雜賀社長)

東洋ライスは2022年1月、国立遺伝学研究所と研究プロジェクトを立ち上げた。東洋ライスの「均圧精米法」と研究所の「メタボローム解析」を組み合わせ、金芽米にどのような栄養成分があるのか、解明していくプロジェクトだ。

その結果、金芽米から「モミラクトン」と5つの「未知の成分」が発見されたという。モミクラトンは、稲から発見された抗菌性物質で、大腸がんや糖尿病への効果が報告されている。

これらは、当然、玄米にも含まれる。白米に精米する過程でほとんど失われるが、金芽米には残っている成分ということになる。

遺伝学研究所の櫻井望特任准教授(農学博士)は「そもそも食品の約6割は、未知の成分でできており、不明なことが多い。この未知の成分には、有用な効果があるかもしれない。成分の断定(同定)には時間やコストもかかるが、金芽米の健康効果を子細に探究するカギになる」と解説する。

東洋ライスが実施した実証実験では、3企業の社員が金芽米を常食したところ、3企業ともに医療費が約40%低減したという。ある企業では、新型コロナウイルス感染率は、1.8%と極めて低水準であることが分かった。

雜賀社長は「将来的に、エビデンスをもって金芽米の健康効果を科学的に証明していきたい」と語る。

■海外事業を強化し、日本のコメ産業を守りたい

日本人一人あたりのコメの年間消費量は年々減少し、2020年度は50.7キログラムとピーク時の半分に減った。水田をはじめ、耕作放棄地は拡大している。

東洋ライスは2019年、コメ産業を盛り上げようと、コメの生産者や加工業者、流通業界、消費者などと協働し、業種を超えたコンソーシアムを立ち上げた。

雜賀社長は「金芽米は、産地や品種を問わずに精製できる。コメや金芽米の健康効果を『見える化』し、広く伝えることができれば、日本の農業の活性化にもつながる。コメの単価が上がれば、生産農家も助かる。日本だけではなく、海外への輸出にも力を入れて、産業を強くしていきたい」と意気込む。

実際、シンガポールの病院では、入院する妊産婦向けの食事として金芽米が導入されているという。

「コメは日本人にとって最も身近な食材。健康に良いコメを食べることは、本人の健康だけではなく、医療費削減にもつながる。一般消費者にもコメの価値を正しく評価してほしい。そのためにも、健康に良くておいしいコメをこれからも提供し続けたい」(雜賀社長)

(PR)東洋ライス株式会社 https://www.toyo-rice.jp/

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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