野生動物ペット化「やめて」、環境団体と動物園が声

■記事のポイント
①環境団体が動物園と連携し野生動物のペット化見直しを訴える
②2021年のペット利用される野生動物の輸入は推定40万頭に
③動画を通して飼育の難しさや5つのリスクを伝え行動変容を促す

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京・港)がこのほど、野生動物のペット化の見直しを訴えるキャンペーンを開始した。国内の4つの動物園が協力する。2021年のペット利用される野生動物の輸入頭数は推定40万頭を上回った。動画やSNSなどを通じて絶滅や密猟・密輸、感染症、動物福祉、外来種の「5つのリスク」を啓発する。(オルタナ編集部・萩原哲郎)

知名度の高いエキゾチックペットを飼育する「5つのリスク」を動画で紹介する

■動画とTwitterで拡散

キャンペーンは動画やWebサイトでの情報発信のほかに、賛同した人にTwitterでの投稿を呼びかける。動画は「飼育員さんだけが知っているあのペットのウラのカオ」として6種の動物を順次公開する。井の頭自然文化園、上野動物園、京都市動物園、那須どうぶつ王国の4園が今回のキャンペーンに協力する。

■増加する野生動物のペット化

海外産や野生生物などのエキゾチックペットへの興味が高まっている。

厚生労働省の統計では2021年のペット利用される野生動物の輸入頭数は推定40万頭超となった。環境省によると、犬猫以外の動物販売業の営業所数も年々増加傾向にある。WWFジャパンが2021年3月に調査したところ、国内では3人に1人がエキゾチックペットに「触れてみたい」と回答。6人に1人は「飼ってみたい」と答えた。

■潜む「5つのリスク」

一方で野生動物のペット化は複数のリスクがある。キャンペーンでは「5つのリスク」と呼ぶ。

ひとつはその動物の絶滅だ。IUCN(国連自然保護連合)のレッドリスト掲載動物のうち20%が絶滅危惧種だが、そのうち11%がペット・展示利用の影響を受けている。また密猟・密輸が増加するリスクも伴う。2007~2018年の間に1161匹のペットがワシントン条約対象種の差止を日本税関が報告した。日本のペット事業者は販売動物の入手の合法性証明が必要ないため、消費者が密輸された動物を区別することは不可能だ。

3つ目のリスクが人獣共通感染症だ。哺乳類と鳥類が保有する未知のウイルスのうち、人間に感染する可能性があるウイルスは80万種以上に及ぶ。新型コロナウイルスについてもコウモリ由来であることが確実視されている。ほかにも動物福祉が確保できないことや、外来生物を発生・拡散させることもリスクとして挙がる。

■動物愛護週間には追加施策も

キャンペーンでは6種の動物を対象に、キャンペーンWebサイトにて順次動画を公開する。9月20日~26日までの動物愛護週間に合わせて、Twitter投稿を促す追加施策も講じる。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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