地方創生に政策起業家が欠かせないワケ(2)

記事のポイント
①「政策起業家」は農村や漁村などの過疎地ほど求められる
②その理由は地方政治は地域全体の「公益」を目指すべきだから
③地域全体の利害関係者の対立を生まない政策の考え方を解説

【連載】政策起業家とは何者か(16)

「政策起業家」は農村や漁村などの過疎地ほど求められます。その理由は、地方政治は地域全体の「利益」を目指すべきだからです。今回はその理由について書きたいと思います。(三井 俊介・NPO法人SET理事長)

地方創生に政策起業家が欠かせないワケ

農村地域ほど、「起業家的政治」が必要であり、「政策起業家」の存在が必要だと結論づけられている論文があります。

この論文では「起業家的政治」をこう定義しています。「社会全体に拡散的な利益を約束する一方で、明確に識別可能な小集団には具体的なコストが発生する政策である」とされています。これは「社会的ジレンマ」と近いものです。

例えば環境政策は、社会全体、地球規模で考えると多くの人々に利益がもたらされます。一方で環境負荷の高い産業には明確な規制が掛かるので、高いコストが発生する可能性があります。

なぜ、分配上の対立が生じているにもかかわらず、このような政策が実行されるのでしょうか。それは特別な政治的アクター、いわゆる「政策起業家」の存在があるからだと言われています。

政策起業家は、特別な政策の反対者を守勢に立たせ、共通に共有された価値観を論証に用いることができます。

では、今回のメインテーマである農村や漁村地域を例にして考えます。まず、農村地域における地域ガバナンス(革新的なことなる手段を組み合わせて開発する)の目的を整理します。

目的はセクター別の政策(農業、自然保護、観光など)から、地域開発戦略の目標に向けて、すべての関連アクター間の協力を発展させることです。

ポイントは関係者の個別の利益ではなく、地域の利益に向けられなければならないことです。しかし、地域ガバナンスに関わるさまざまな利害関係者の間に分配上の対立をもたらすことがあります。

地域ガバナンスは、再分配政策、集合的財の生産、伝統的な地域開発政策の変更などを扱うゆえ、政策起業家の行動に典型的な政策分野だとされています。

日本では、従来の国による標準化された枠組みとそれに依存した地方の政策展開が長らく続いてきました。

しかしこれからの時代は、地域資源を個性的に地域自らが活用し、多面的な高付加価値を目指す政策の視点、すなわち地域に根ざした価値を引き出し拡充すると同時に、地域の欠点を克服するリージョナリズム(地域主義)の視点が重要となります。

この観点からも政策起業家の役割は大きいと言えるのではないでしょうか。

mitsuishunsuke

三井 俊介(NPO法人SET理事長)

特定非営利活動法人SET 理事長・NPO法人高田暮舎理事・地域政党とうほく未来創生 副代表 1988年、茨城県つくば市生まれ。NPO法人SET (2019年内閣総理大臣賞受賞)理事長。新公益連盟北海道・東北ブロック共同代表。元岩手県陸前高田市議。大学院に通いながら大学教鞭もとり、政策起業家研究のアウトプットをおこなう。 2022年3月に「政策起業家が社会を変える」出版。note /執筆記事一覧

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キーワード: #政策起業家

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