TICADを機に知っておきたい課題解決ブランド5選

「第8回アフリカ開発会議」(TICAD8)が8月27~28日、チュニジアで開催される。TICADはアフリカの開発をテーマにした国際会議だが、気候変動や新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、アフリカの人道危機は深刻だ。TICADを機に知っておきたい、課題解決につながるアフリカ発ブランドを紹介する。(オルタナ副編集長=吉田広子)

■「サイレントクライシス」に陥るアフリカ

世界ではさまざまな人道危機が発生しているが、報道されずに知られていない危機を「サイレントクライシス」と呼ぶ。

世界食糧計画(WFP)は2022年2月、アフリカ北東部に位置し、「アフリカの角」と呼ばれるエチオピア、ケニア、ソマリアで1300万人以上が深刻な飢餓に直面していると発表した。WFPは「3年連続雨季に雨が降らなかったことで、作物が壊滅的な打撃を受け、異常なほど家畜の死亡が増えている」と報告する。

コンゴ民主共和国では1996年から20年にわたって紛争が続く。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、周辺国と武装勢力が複雑に関与し、第二次大戦後最多の500万人以上が死亡し、101万8000人以上が難民・庇護希望者となり、国境を越えて避難を強いられているという(2022年3月現在)。

しかし、国際社会の関心は低く、UNHCRは深刻な資金不足(達成率11%)で、必要な支援の多くを断念せざるを得ない状況だとしている(2022年4月現在)。

TICADは、将来的な経済成長が見込まれるアフリカの開発をテーマにした国際会議だ。日本政府が主導し、1993年に始まった。天然資源が豊富でポテンシャルが高い一方で、アフリカが抱える課題は深刻だ。

こうしたなか、民間レベルでは、アフリカの魅力を伝えるさまざまなブランドが生まれている。現地の雇用創出にもつながる注目のブランドを紹介する。

andu amet:エチオピアからラグジュアリーな革製品ブランド

心地よさと機能性を追求したスマートフォン・ポシェット「Comfy(コンフィ)」(税込26,400円)

世界最高峰の羊革といわれるエチオピアシープスキンを使った革製品ブランド「andu amet」(アンドゥアメット)。アフリカの雄大な自然や文化にインスピレーションを受けたデザインと、ふわふわと柔らかな革の風合いが特徴。アンドゥアメットとは、エチオピアの言葉で「ひととせ(1年)」という意味で、「大切に長く使ってほしい」という思いを込めた。

食肉の副産物を原料に、環境に配慮された工場でなめされたレザーを使用。エチオピアの直営工房で、日本の技術を受け継いだ現地職人たちがすべてハンドメイドで製作する。経済的に困窮するエチオピアからラグジュアリーブランドを輩出し、次世代型のフェアトレードを目指す。

RICCI EVERYDAY:色鮮やかなアフリカンプリントが魅力

人気のアケロバッグシリーズ
色鮮やかなアフリカンプリントが人気のアケロバッグシリーズ(中央)。トートやクラッチなど4通りの使い方ができるアケロバッグ4WAYは税込15,180円

伝統的なアフリカンプリントが魅力的なライフスタイルブランド「RICCI EVERYDAY (リッチーエブリデイ)」。色鮮やかな布地を生かしたデザイン性と機能性を兼ね備えたバッグやインテリアアイテム、アパレルなどを展開。製品はすべてウガンダの直営工房で一つひとつ手作りされている。

RICCI EVERYDAYは「世界中の女性が本来のありたい姿を見出し、実現できる世界」を目指す。工房ではシングルマザーをはじめ社会的に疎外されがちな女性たちを積極的に採用。現地の平均給与の2倍の賃金を支払い、昇給制度も整える。製品に使用しているアフリカンプリントの9割は、ガーナの工場で環境に配慮して製造されている。

CLOUDY:アフリカの伝統柄をフォーマルにも楽しむ

ドイツ・シュニール織のブランド「FEILER(フェイラー)」とコラボレーションしたアイテム。CLOUDYバッグ(奥)は税込14,080円、CLOUDYコラボ巾着(手前)は税込13,200円、CLOUDYコラボ巾着バッグ(右)は税込17,600円

アフリカの民族柄、伝統の織、特産品などを取り入れたアパレルブランド「CLOUDY(クラウディ)」。バッグや衣類などを展開し、フォーマルにも使える洗練されたアフリカンテイストが特徴だ。ブランド名には「曇りの日をきちんと楽しんで生きる」という思いを込めた。

ガーナとケニアで自社工場を運営し、600人の雇用を創出。障がい者やシングルマザーといった社会的弱者を積極的に雇用し、支援している。高品質の商品を作り出すと同時に、収益の一部をアフリカでの雇用支援や教育支援、健康の促進活動に充てている。

AFRICL:ベナンの手染め生地を日本の技術で縫製

AFRICLのスカート(税込30,800円)。手入れのしやすさや大きなポケットなど機能性にもこだわる

西アフリカ・ベナンの手染めの伝統生地バティック(ろうけつ染め)を、日本の縫製で仕立てたアパレルブランド「AFRICL」(アフリクル)。スカートやシャツ、インテリア類などを販売している。「美しい伝統文化を纏うことと今のくらしに心地好いこと」の鼎立を目指す。

近年、アフリカ以外の地域で生産されたアフリカ布が増えているが、AFRICLは、「アフリカの国々の手仕事のあたたかさを感じていただきたい」という思いで、アフリカ産の生地にこだわる。生地の取引先はベナンの若手職人が働く工房を選び、伝統文化の継承に貢献する。ユニセックスのシャツのサイズはワンサイズで、145cm~185cmまで対応している。

Proudly from Africa:アフリカの最旬ブランドがそろうオンラインショップ

Proudly from Africaでは、洗練されたアフリカ発のブランドを取りそろえる

アフリカの人々が誇りを持って手掛けるブランドや商品を、創業哲学や背景ストーリーとともに紹介する「Proudly from Africa(プラウドリー・フロム・アフリカ)」。「オシャレでユニークで高品質な、アフリカ発のブランドを育てる」という思いでスタートした。バッグや衣類、靴、アクセサリー、アイウェア、食品など幅広い商品を取り扱っている。

現地メーカーとは100%前払いで取り引きし、雇用や暮らしの改善につなげている。モノカルチャー経済構造を脱し、持続可能な開発を自らの手で進めようとする作り手たちの動きに伴走している。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #エシカル

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