サステナ部員塾18期上期第5回レポート

株式会社オルタナは8月24日に「サステナビリティ部員塾」18期上期第5回をオンラインで開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①統合思考/統合レポーティングとは何か

時間: 10:30~11:45
講師: 室井 孝之 (株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

今や700超の日本企業が発行している任意開示「統合報告書」について、オルタナ総研フェローの室井から、統合思考や統合報告書が求められる背景や、最近の非財務情報開示についての動向、企業による開示の好事例などを解説・紹介した。

企業の価値創造プロセスにおいては、財務情報と非財務情報を合わせて高めていくことが重要とする統合思考が求められるようになったのには、投資家や企業の短期志向や経済至上主義での企業活動が、気候変動や格差拡大などさまざまな負の遺産を生み出していることが背景の一つにある。企業が財務・非財務双方の情報を開示し、社会課題の解決にどのように寄与しているのかを、正しくステークホルダーに評価してもらうことに、統合報告書を発行する意義がある、とまとめた。

その中で、非財務情報の開示については、さまざまな国際ガイドラインが統合される動きがあることにも言及し、企業が統合報告書に掲載する15種類の非財務情報コンテンツを、開示の好事例とともに紹介し、企業として必ず掲載すべきは、社長メッセージだと述べた。

統合報告書以外にも、「TCFDレポート」や「人権報告書」、「ダイバーシティ&インクルージョンレポート」など、テーマを特化して非財務情報を発信している事例もある。また、非上場企業やNGO/NPO、国立大学法人などの教育機関などでも、ステークホルダーとのコミュニケーションツールとして発行する団体が増えており、将来的には地方自治体などでも、市民や議論を活発化させる情報提供手段として増えていくだろうと述べた。

ミニプレゼンテーション:再エネ社会に向かうために ~パワーシフト~

時間:11:45~12:00
講師:国際環境NGO FoE Japan吉田明子氏

地球規模での環境問題に取り組むFriends of the Earth Internationalのメンバー団体であるFoE Japanでは、気候変動や森林破壊、大規模開発による環境・人権問題、脱原発・脱石炭など、幅広く政策提言活動を行っている。吉田氏は、気候変動やエネルギーの担当として、市民や自治体に再生可能エネルギーの選択を促す「パワーシフト・キャンペーン」を立ち上げ、展開している。

2016年に、電力の小売全面自由化を主眼とする電力システム改革が実施されたのを背景に、新電力のシェアは2016年の約5%から現在21%にまで伸びてきている。「パワーシフト・キャンペーン」では、電源構成をしっかり開示し、理念や調達方法などが再エネ社会へのシフトにつながっている新電力42社を紹介し、市民や企業・学校などの事業所向けに切り替えの選択を促進してきた。

しかし、昨年来の世界的な天然ガス価格の高騰を背景に、電力市場価格は2倍超に高騰しており、電力市場を通してFIT電気を活用してきた新電力会社の中には、仕入価格の高騰で事業継続の危機に直面しているところもあるという。大手電力会社は、発電所からの直接契約で、電力市場を通さずに電気を仕入れることもできるため、電力市場は、大手電力会社が実質的に市場操作可能な状態になっている点が問題だ、と吉田氏は指摘した。市場を介さずに直接電力契約ができるPPA(電力購入契約)の発電量も増加しており、「脱炭素化に向けて再エネの選択は不可欠。電気を選んで未来を変えるアクションにつなげてほしい」と締めくくった。

②CSR検定3級試験の過去問演習と解説

時間: 13:00~14:15
講師:木村 則昭 氏 (株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

10月23日実施のCSR検定3級の過去問題から13問を取り上げ、解説した。「全40問、制限時間は70分なので1問当たり1分45秒を使うことができる。問題は冷静に読めば1分で理解できるはず」と、受験に臨むにあたっての心構えも紹介した。

WS(自社のアウトサイドイン&パーパス表現②)

時間: 14:30~15:45
講師:森 摂(株式会社オルタナ代表取締役 オルタナ編集長)

前回に続き、参加企業が自社のパーパス(存在意義)についてプレゼンテーションを行った。今回は、11社(丸善製薬、SGSジャパン、積水ハウス、りそなアセットマネジメント、エフ・シー・シー、帝国ホテル、日産自動車、ライオン、青山商事、ブリヂストン、小林製薬)が発表した。

④企業事例:竹中工務店のサステナビリティ戦略

時間:16:00~17:15
講師:林 健太郎 氏(株式会社竹中工務店 経営企画室 CSR推進部長)

竹中工務店は1610年に神社仏閣の造営を業として創業。その後、1899年に神戸に進出したことを機に、創立となった。国内建設事業、海外建設事業、開発事業を中核とし、2021年度のグループ売上高は1兆2604億円に上る。グループ従業員数は1万3212人。

グループ中核企業である竹中工務店の存在感が大きく、これまでガバナンスのあり方が課題だった。2014年に竹中グループCSRビジョンとメッセージ、グループ成長戦略を制定し、組織として方針を打ち出した。成長戦略のなかではまちづくりを通じたサステナブル社会の実現に貢献する施策を推進していくことを明確にした。

「2030年のグループのマイルストン」では働きがいなどの非財務指標も制定。5段階の従業員満足度調査4.0以上や法令違反0件などを掲げる。また「重要課題(マテリアリティ)」も公開した。28の重要課題を設定した。

環境面ではスコープ1~3全体のGHG排出量を2030年までに35%削減、2050年までに100%削減を目指す(基準年:2018年)。そのうちスコープ1、2に相当する自社排出は2030年に30%削減を掲げる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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