仏シンクタンク、3メガバンクの化石燃料融資を酷評

■記事のポイント
①フランスの環境金融シンクタンクが、邦銀3行の脱化石の取り組みを分析
②邦銀3行は「ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス」に参加している
③しかし取り組みのスピードが遅く、コミットメント達成は難しいと酷評した

フランスの環境金融シンクタンク「Reclaim Finance」(リクレイム・ファイナンス)は、ネットゼロに向けた銀行の国際的なイニシアティブ「ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」に参加する日本の3メガバンク(みずほ、三菱UFJ、三井住友銀行)の化石燃料関連融資の削減ペースが、他国のNZBAメンバーに比べ「あまりにも遅い」と酷評した。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

2020年3月設立。本部はパリ、欧州、米国に拠点を置くシンクタンク

■3メガバンクのコーポレートファイナンスを問題視

リクレイム・ファイナンスは、3メガバンクは「プロジェクトファイナンス」での新規の石炭関連事業を融資対象から除外したが、「コーポレートファイナンス」では融資を続けており、石油・ガス向け融資も続けていると指摘している。

「コーポレートファイナンス」とは、企業価値を最大化することを目的として、資金を調達し事業に投資し、調達元に資金の返済や還元をしていく活動である。

同シンクタンクは、特に海外での石炭鉱業や電力事業の拡大を優先した化石燃料融資を早急に停止すべきと指摘している。

「気候の混乱に関する銀行業務(BOCC)2022」によると、MUFG、みずほ、三井住友銀行は、2016年から2021年にかけて世界のトップ60の銀行が行った化石燃料資金調達のほぼ10%を占めている。

3メガバンクは2022年、「石炭火力発電」について政策を見直した。

・みずほ「石炭火力発電所の新規建設・既存発電所の拡張を資金使途とする投融資等は行わない」
・MUFG「石炭火力発電所の新設および既存発電設備の拡張にはファイナンスを実行しない」
・三井住友「石炭火力発電所の新設および拡張案件への支援は行わない」

さらに、以下のような方針も掲げている。

・みずほ「エネルギー転換に向けた革新的、かつクリーンで効率的な次世代技術の発展等、脱炭素社会への移行に向けた取り組みについては引き続き支援する」
・MUFG「パリ協定目標達成に必要な、CCUS2、混焼等の技術を備えた石炭火力発電所は個別に検討する場合がある」
・三井住友「脱炭素社会への移行と実現に資するお客さまの取組みを支援する」

リクレイム・ファイナンスは3メガに対し、「2022年に政策が見直されたにもかかわらず、依然として、ネットゼロのコミットメントを果たすには至っていない」と断じている。

さらに、NZBAのメンバーとして2023年6月までに化石燃料を段階的に廃止し、2050年までに国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロの道筋に沿った「新しい石炭プロジェクトなし」を含む「新しい化石資産の開発、資金調達、促進の制限」を強く要求している。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #気候変動

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