進むESG情報開示、バリューウォッシングをどう防ぐか

①第 77 回国連総会 (UNGA77)に合わせ、第8回国連科学サミットが開かれている
②その一環で同志社大学社会価値研究センターはパネルディスカッション「バリューイングバリュー(価値の評価)」を開いた
③フィリップ須貝・同志社大学大学院ビジネス研究科教授は、「バリューウォッシング(価値の欺瞞)が起きないように注意する必要がある」と話した

第 77 回国連総会 (UNGA77)に合わせ、第8回国連科学サミットが開かれている。その一環で、同志社大学社会価値研究センター(VRC)は9月26日、パネルディスカッション「バリューイングバリュー(価値の評価)」を開いた。マーティングを研究するフィリップ須貝・同志社大学大学院ビジネス研究科教授は、「ESGに関する情報開示が進むなか、バリューウォッシング(価値の欺瞞)が起きないように注意する必要がある」と話した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

同志社大学社会価値研究センターは、「価値」を評価するモデルを発表した

「企業が『価値を創造する』と言ったとき、それが何を意味するのか。株主や顧客、地球環境といったステークホルダーの立場によって、企業が提供する『価値』の評価は変わってくる。こうした企業の価値を正しく評価することは難しいが、自己申告の『見せかけ』にならないように、ステークホルダーへの影響を測定・管理する新しいモデルが必要だった」

VRCセンター長を務める須貝教授は、こう説明する。そこで、須貝教授は、価値を評価する手法づくりに取り組んだ。

2016年から2018年にかけて、150以上の文献をもとに価値の定量化に取り組んだが、「大失敗に終わった」(須貝教授)。次に、ESGの格付け機関にあたったが、評価方法はブラックボックスだったという。

そこで、サステナビリティ報告に関する国際的枠組みに盛り込まれた700以上の影響分析指標を統合する作業を進めた。そのうえで、最終的に7つのステークホルダー、27のテーマ、81の目標を設定した。

7つのステークホルダーとは、 (1)自らの組織、(2)顧客、(3)従業員、(4)株主、(5)取引先など関連企業、(6)地元地域社会、(7)地球環境――だ。

須貝教授は、近江商人の「3方よし」にならい、この7つのステークホルダーにとって価値のあるビジネスを「7方よし」と呼んでいる。

VRCが発表した白書は、社会価値研究センターのウェブサイトから無料でダウンロードできる。

須貝教授は「課題は、企業の社会責任をどう評価していくのか。本当に企業の価値を計ることができるのかという問題意識から始まった。情報開示は、ネガティブなものではなく、社会課題を解決するためのコラボレーションに必要なものだと前向きにとらえることが必要だ」と強調した。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #ESG

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