統合報告書レビュー(19):伊藤忠テクノソリューションズ

伊藤忠テクノソリューションズ統合レポート2022の別冊「人材戦略詳細編」の中で柘植一郎社長は、「強力な多様性を活かし実現するダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)への取り組み、健康と幸福を目指す「健幸経営」をはじめ人材への積極的な投資をこれからも続ける」と人的資本投資を強調されています。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

伊藤忠テクノソリューションズ統合レポート2022の別冊「人材戦略詳細編」

人材戦略詳細編のコンテンツは、「社長メッセージ」「CTCグループ企業理念・サステナビリティ・中期経営計画」「人材戦略 人事総務室室長インタビュー」「人材資本の価値を高め、企業価値を向上させる取り組み」「2021年度人的資本の取り組みハイライト」「中期経営計画と人材関連施策」「人材関連データ」等です。

同社は「人材戦略詳細編」を2021年から公表していますが、次籐智志人事総務室室長はその発行趣旨を次の様に述べています。

  1. 伊藤忠テクノソリューションズの最重要資本である人材の力をもっと社内外にアピールしたいと考えていた。
  2. 同時に多様なステークホルダーとのコミュニケーションの質の向上も考える中で、統合レポートの別冊である人材戦略詳細編を公開することを着想した。
  3. 経営層の考え、ビジネスモデルや経営戦略につながるストーリー、リスクマネジメント等と総合的に開示することを重視した。
  4. 開示のみが目的ではなく、可視化してコミュニケーションや取り組みの見直しサイクルをつくることが重要で、人材情報の統合基盤の整備、人材マネジメントのDX化も重点施策として推進している。

同室長は、人的資本について「人材と挑戦のDNAが競争力の源泉」「人的資本の情報開示はリアルをありのままに」「年次・年齢・地位で隔たりのない組織を維持」「失敗で終わらせない挑戦できる文化を重視」「育成体系データベースの整備で適所適材を促す」「女性活躍推進などの多様性重視が新たな価値をつくる」と強調しています。

「マテリアリティ(重要課題)」として、「ITを通じた社会課題の解決」「明日を支える人材の創出」「責任ある企業活動の実行」が掲げられています。

「明日を支える人材の創出」には、「多様なプロフェッショナルの育成」「互いを尊重し高めあえる風土の醸成」「未来を創る人材教育への貢献」が示されています。

伊藤忠テクノソリューションズは、社長を最高健幸責任者(CHO:Chief Health Officer)として「健幸宣言」に基づいた健幸経営を推進しています。

「健幸宣言」は、「健幸経営を人事戦略の一つとして、社員一人ひとりの身体的・精神的・社会的な健康と幸福(「健幸Well-being」を目指しています)と定められています。

「人事関連データ」では、「育児休業制度の男性取得率」「育児休業の男性平均取得日数」など詳細が開示されています。

今後は、2022年6月に金融庁金融審議会ワーキンググループが公表した有価証券報告書における「男女別賃金水準」等の公表についても「人材戦略詳細編」において開示されたらいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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