帝国ホテルが「耳まで白い食パン」を開発、食ロス削減へ

記事のポイント


  1. 帝国ホテルが「おいしく社会を変える」を掲げ、食を通じた社会課題解決の取り組みを強化している
  2. パンの耳を切り落とさなくて済む「新食感の白い食パン」を開発し、食品ロス削減に貢献する
  3. 10月からは、「食の多様性」に対応するため、ヴィーガンメニューを拡充した

帝国ホテルが「おいしく社会を変える」を掲げ、食を通じた社会課題解決の取り組みを強化している。パンの耳を切り落とさなくて済む「新食感の白い食パン」の開発をはじめ、10月からヴィーガンメニューの拡充、サステナブルなウェルネス宿泊プランの提供を始めた。同社は「ラグジュアリーとサステナビリティが融合したおもてなし」を目指す。(オルタナ副編集長=吉田広子)

■パンの耳の年間廃棄量は約 2.5 トン

耳を切り落とさなくて済む「新食感の白い食パン」

これまで帝国ホテルのサンドイッチは、見た目の美しさと食感を追及するため、食パンの耳を切り落として提供していた。この切り落とした耳はサンドイッチの具材が付着しているなどの理由で、別の料理に再利用することが難しく、廃棄せざるを得なかったという。年間廃棄量は約 2.5 トンに上る。

そこで、杉本雄・東京料理長が中心となり、廃棄が出ない食パンの開発に着手。約半年間試行錯誤して、「新食感の白い食パン」が生まれた。従来の食パンに比べて低温でじっくり焼成することで、しっとりとした食感になり、耳まで白く柔らかく仕上げることができた。

杉本東京料理長は「これまで野菜や果物の皮などを活用したサステナブルソルトや、廃棄を極力出さないレシピ開発に取り組んできた。帝国ホテルで長く愛されてきた伝統的なサンドイッチの味わいを変えることなく、環境に配慮した新しいものを生み出すことに意義があると考えた」と経緯を語る。

この白い食パンは、帝国ホテル 東京のホテルショップ「ガルガンチュワ」で販売するサンドイッチ商品に10月から導入している。今後、設備の更新を進め、2023年度中に帝国ホテル 東京で提供するすべてのサンドイッチからパン耳の廃棄をなくす予定だ。

フランス料理もヴィーガン仕様に

帝国ホテル 東京では、10月からヴィーガンメニューを拡充した

さらに、帝国ホテル 東京では、10月からヴィーガンメニューを拡充した。宗教や信条、健康、環境、アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮し、「食の多様性」への対応を進める。

フランス料理「レ セゾン」では、ヴィーガンコースを新たに用意し、看板メニューの「黒トリュフのパイ包み焼き」もヴィーガン仕様に変えた。鉄板焼「嘉門」でも、昆布出汁の飲み比べなど、食材の美味しさを際立たせる調理法と五感で楽しめる演出で、植物性食材でも鉄板焼を堪能できるスタイルを追求したという。オールデイダイニング「パークサイドダイナー」や宴会、ルームサービスでもヴィーガン対応を進める。

合わせて、10月からは2種類のウェルネス宿泊プランを開始した。調理過程で発生したフルーツの皮や、通常伐採されるホテル敷地内に植えられているハーブを活用しながら、「香のおもてなし」にもこだわる。

「ラグジュアリー&ウェルネスステイ」のプランでは、フランス料理「レ セゾン」の「ヴィーガン フレンチガストロノミー」のほか、「豆乳ときな粉のバナナスムージー」、平飼い卵を使った卵料理、ヴィーガンフォカッチャなどを朝食として楽しめる。

「ホテルの時間を楽しんでいただくために、当社には、お客さまの健康、おいしい食事を支える地球環境にまで思いを馳せる責任がある。多くのお客さまが健康で、幸せを感じていただけることを願い、未来を見据えたホテルの在り方を深化させていきたい」(杉本東京料理長)

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #フードロス

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