「脱化石」保険会社ランキング 日本ではSOMPOがトップ

記事のポイント


  1. NGOが保険会社の化石燃料事業の引受・投融資のランキングを発表
  2. 化石事業撤退が最も進んでいるのは独アリアンツ、日本ではSOMPO
  3. パリ協定1.5℃目標達成には、撤退のさらなるスピードアップが必要

環境NGO 27団体が参加する国際ネットワーク「Insure Our Futureキャンペーン」はこのほど、世界の大手保険会社30社の化石燃料事業への引受・投融資に関する2022年ランキングを発表した。化石撤退に積極的な保険会社としてドイツのアリアンツが1位に、日本ではSOMPOの15位がトップとなった。(オルタナ副編集長・長濱慎)

パリ協定1.5℃目標達成に、スピード感を持った化石燃料事業からの撤退を訴える

「Insure Our Futureキャンペーン」は、保険会社に化石燃料事業(石油、石炭、天然ガス)への引受や投融資を止めるよう求めるキャンペーンだ。2017年から毎年、ランキングを発表している。ランキングは各社への調査や公開情報から割り出したスコアをもとに決定し、上位ほど脱化石に積極的なことになる。

保険引受の制限では、ドイツのアリアンツが1位に。同社は今年4月、石炭に続いて新規の石油・ガスプロジェクトへの引受や投融資を行わない方針を打ち出した。

日本の保険会社では、SOMPOの15位がトップだった。同社は今年5月、オイルサンド開発と北極野生生物保護区での採掘事業への新規引受の停止を発表。6月には25年1月までに、温室効果ガス(GHG)削減の策定がない石炭事業への引受・投融資を停止する方針を打ち出した。

他の日本の会社では、東京海上(16位)はSOMPOのような企業単位で引受を制限する方針がないこと、MS&AD(19位)は石油・ガスについての制限方針がないことなどが、改善すべきポイントとして指摘された。

Underwriting が「引受」で1位はアリアンツ(独)、Investment(投資)撤退の1位はスコール再保険(仏)に

石炭関連事業への引受停止を掲げた保険会社は世界全体で41社(今回のランキング対象外も含む)あり、元受保険市場の39.3%、再保険市場の62.1%を占める。石油・ガス事業については元受保険市場14.9%、再保険市場37.6%で、まだこれからという状況だ。

ランキングの報告書では「石炭会社は今、保険料の高騰や保険適応範囲の縮小に直面し、引受先を探すのにこれまで以上に時間を要している」と、保険会社の撤退効果を評価している。

その一方で、国連の気候変動対策キャンペーン「Race to Zero」が今年6月、ネットゼロ・インシュアランス・アライアンス(NZIA)加盟企業に出した「排出削減対策をしていないすべての化石燃料を段階的に削減・廃止」という要求に応えきれていないという懸念も示した。

NZIAは2050年までのカーボンニュートラルにコミットする保険業界のイニシアチブで、SOMPO、東京海上、MS&ADを含む世界の大手約30社が加盟している。「Insure Our Futureキャンペーン」に参加するNGOの1団体である環境・持続社会研究センター(JACSES)の田辺有輝プログラムディレクターは、こうコメントする。

「保険会社はエネルギー事業を行う商社や電力会社を重要な顧客としており、株式の持ち合いなどを通じて関係を強化してきた経緯があります。仮に1社が目立った脱化石方針を採用して事業から撤退した場合、ライバル保険会社にその顧客を奪われてしまう危機感も持っています」

一方で、近年は着実に状況が変化しているとも指摘する。

「欧州や米国の機関投資家からのエンゲージメントも強く、評判リスクの低下も避けたいため、他社より進んだ気候変動方針を取り入れようと競争することで、年々少しずつですが方針が改善されている現状があります。ただ、気候変動の緊急性からみれば非常に遅く、更なるスピードアップが求められています」

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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