アウディが国内最速150kWのEV充電器を全国展開へ

アウディ ジャパン マティアス シェーパース社長インタビュー

記事のポイント


  1. アウディが2026年以降に投入する新型車は、すべてEVに
  2. 日本法人はポルシェと共に150kWの高速充電器の普及を進める
  3. 再エネ電源の確保を目指し、自治体などとの連携にも取り組む

アウディが2026年以降に投入する新型車は、すべてBEV(バッテリー式電気自動車)となる。日本においても24年までに15車種のEVを投入し、ポルシェと共同で高速充電インフラの拡大に取り組む。日本法人のマティアス シェーパース社長は、これまでのEV充電器の3倍の充電速度となる「150kW」の充電器を各地に独自展開すると表明した。(オルタナ副編集長・長濱慎)

マティアス シェーパース 2002年アウディ ドイツ本社に入社。アジア地区担当を経て、2011年アウディ ジャパン営業本部長兼ネットワーク開発部長に。アウディ ジャパン販売代表取締役社長、フォルクスワーゲン台湾代表取締役を経て、2021年9月より現職。フォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役 、アウディ ジャパン ブランド ディレクターも兼ねる。

■生き残るための選択肢はBEV(バッテリーE V)しかない

――アウディはEV(電気自動車)の中でも、バッテリー式の「BEV」に絞る決断をしました。プラグインハイブリッド車(PHEV)などは、選択肢から外しましたね。

これはドイツのアウディ本社が、EVが気候変動を効率的かつ効果的に抑制することのできる唯一の方法であるとの考えにもとづいて下した決断です。バッテリーを持ちながらエンジンで動くPHEVはあくまでも一時的な技術で、欧州では補助金も打ち切られます。

そうなると世界各地で厳しくなる環境規制をクリアできるのは、乗用車ではBEVしかありません。1899年にアウディのルーツにあたるホルヒが創業して以来、120年以上にわたって内燃機関の自動車を作ってきたメーカーとしては大変な決断です。

しかし、地球環境の問題を受けて社会の価値観が変わる中、私たちも変わらなければなりません。

――日本市場にも、2024年までに15車種のEVを投入する予定ですね。

アウディは世界共通の方針として、内燃機関の自動車の製造を原則として2033年までに終了させます。日本でもモデルライフが終了したものから、ガソリン車の販売を順次停止していきます。

アウディはフォルクスワーゲングループ(※)のプレミアムブランドという位置付けで、新しいものへの感度が高い顧客に選んでいただいています。日本においてもプレミアムなEVは受け入れられると考えていますが、まだガソリンエンジンを好む顧客もいます。

そうした顧客が「アウディ」というブランドに求めるEVを提供できるかが問われていますが、十分に可能です。EVはモーターやバッテリーの配置など設計の自由度が高く、最適な重量バランスによる運動性能の向上や、魅力的なデザインがしやすいのです。

アウディが提供するのは、あくまでもアウディの価値観やDNAを反映した車であって「環境にいいだけのEV」はつくりません。

※フォルクスワーゲングループの乗用車ブランド:フォルウスワーゲン、アウディ、セアト、シュコダ、ランボルギーニ、ポルシェ、ベントレー、ブガッティ

EVのフラッグシップモデル「e-tron GT」。ポルシェとプラットフォームを共有しながら、アウディ伝統の4WDシステム「クワトロ」を搭載

――日本独自の取り組みとして、ポルシェと共同で全国のディーラーに急速充電器の設置も進めています

「プレミアム チャージング アライアンス」の名で、10月13日にサービスを開始しました。アウディとポルシェは、同じフォルクスワーゲングループのプレミアムブランドです。アウディが2022年末までに段階的に設置する52拠点の52基と、ポルシェのディーラーを合わせた110拠点121基の充電器を、一部を除いて24時間、両ブランドのオーナーは利用できます。

導入するのは国内最速の「150kW」の充電器で、理論上は一般的に普及している50kWクラスの約3分の1の時間で充電することが可能です。ガソリンスタンドで給油するような感覚で、コーヒーを飲んでいる間に長距離の移動に十分な充電を完了させることもできます。

市場を広げるにはEVを売るだけでは不十分です。充電インフラもセットで普及させていかなければ意味がありません。近々正式に発表できると思いますが、ゴルフ場やホテルなど、アウディの顧客が立ち寄りそうな場所に数百基レベルで充電器を普及させる計画も進めています。

国内最速クラスとなる150kWクラスを普及へ(アウディ・ジャパン資料より)

■再エネ普及に取り組む地域を訪ね議論を交わす

――そのための電力をどう確保するかも重要な課題です。ドイツ本国では再生可能エネルギー電源の開発も進めていますね

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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