SDGsブームの影で強まるグリーンウォッシュ規制

記事のポイント


  1. 消費者の環境意識が高まる一方で、「グリーンウォッシュ」な商品も増えた
  2. 欧州や米国では誇大広告や実態のない取り組みに対しての規制や監視が強化
  3. 米ウォルマートには300万ドル(約3億7800万円)の課徴金の支払い命令も

環境などに配慮した商品へ消費者の関心が高まる一方で、エコを謳う商品が市場に溢れかえり、本当に環境配慮された商品が分らなくなってしまっている。そんな状況の中で問題になっているのが「グリーンウォッシュ」だ。SDGsの取り組みが先行して行われてきた欧州や米国では、すでに誇大広告や実態のない取り組みに対しての規制や監視が強化されてきている。本稿ではグリーンウォッシュを巡る世界の動きや事例を分析するとともに、問題点を考察していく。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

もはや「エコ」はNG?規制を強める世界の動き

グリーンウォッシュとは、「ウソをごまかす」「欠点を隠して上辺だけ良く見せる」という意味の「ホワイトウォッシュ」と、環境や自然にやさしいイメージの「グリーン」を組み合わせた造語。実態とは異なる環境配慮を謳い、消費者に誤解を与えるような行為を指す。

グリーンウォッシュが横行している現状に対して欧州では、「循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」に基づいた政策を発表し、グリーンウォッシュにつながる行動規制を強化していく。

「環境にやさしい」「グリーン」「エコ」など曖昧な表現での訴求は認めない方針を打ち出した。さらに、商品の一部にしか該当しない環境配慮の取り組みを根拠に、商品全体でサステナブルな訴求を行うことなども認めない。

企業活動が摘発された事例も

ファストファッションブランドH&Mは、2019年に発表した環境にやさしい持続可能なファッション「コンシャスコレクション」を世界で展開した。

オーガニックコットン・リサイクルポリエステルを使用している環境配慮型の製品と謳っていたが、ノルウェー消費者庁からグリーンウォッシュと認定されてしまった。

リサイクルポリエステルを使ったTシャツは製造工程で約2万リットルもの水を使用することや、リサイクル素材を何%使用したのかなど具体的な根拠が示されていないことに対して指摘がなされた。環境配慮を謳う根拠だけでなく、消費者がその情報にアクセスできることの必要性が訴えられた事例だ。

米ウォルマートの事例では、環境配慮をアピールしている商品の表示や広告の中で消費者の誤解を招く表現があるとして、300万ドル(約3億7800万円)の課徴金の支払い命令が下された。

シーツやタオル、ブランケットなどで、使用していない竹素材を表記し「サステナブル」「環境に優しい」などの謳い文句で広告活動を展開。消費者が誤解を招く危険があるとして取り締まりの対象になった。

このようにグリーンウォッシュが指摘されると、課徴金などはもちろん自社製品の売上ダウン、ESG投資への悪影響、そしてもっとも大切な消費者からの信頼を失う危険性も孕んでいる。

消費者からの真の信頼を得るには

ある調査によれば、「サステナブルな商品を扱っている」というブランドの説明を信頼すると答えたのは、回答者の20%にすぎなかったという。(COMPARE ETHICS社調査)

サステナブルな商品に対する消費者の目線は厳しく、環境にやさしいという上辺だけの謳い文句ではもはや簡単に見抜かれてしまう。

日本でもさまざまな企業が自社のサステナブルな取り組みをPRする活動が活発になってきているが、その取り組みに対して、どのくらい環境への影響が低減されているかなどの検証は追いついているのだろうか。

消費者が容易にアクセスできて判りやすい明確な基準がないのも、問題のひとつだ。先ほどの調査では、83%の人が「第三者機関の認定を受けているブランドのほうが信頼できる」とも回答している。消費者が本当に信じて選べる明確な基準をつくっていくことも、真の信頼を得る第一歩になるのではないだろうか。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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