コカ·コーラ日韓社員550人が海岸で「清掃活動」

日本コカ·コーラ(東京・渋谷)の従業員約550人が、10月18日に福岡市内の海岸に集まり、清掃活動を実施した。今回は初めて韓国の社員も多く参加して、総勢約550人での「海岸清掃活動」となった。(オルタナ編集委員=瀬戸内 千代、写真=高橋 慎一)

福岡市の志賀島海水場で清掃活動をする社員たち=10月18日早朝

実施場所は、福岡市内の勝馬海水浴場、志賀島海水浴場、海っぴビーチ、奈多海岸の4カ所で、2つの海水浴場は、国宝の金印が発見されたことで知られる「志賀島(しかのしま)」にある。今回、ホルヘ・ガルドゥニョ社長を含む約210人が担当した志賀島海水浴場は、九州本土と志賀島をつなぐ砂州沿いの志賀島橋を渡ってすぐの場所で、下調べでは最もごみが多かったという。

前夜からの強風のため、砂州にはたくさんのプラスチックごみが吹き寄せられていた。風に転がされて砂浜から陸に再び上がるごみも見られた。実施時刻の朝は潮が引いていて、満潮ラインには多くの流木や石、海藻、貝殻、鳥の羽などが残されていたが、人工物のほうがより数量も多く色も目に付いた。

網を引き、大量のごみを集めた

海水浴場は砂州よりはごみが少なかったが、小さく砕けたものが多かった。メーカー名がわかるようなサイズのごみは稀で、元の製品が何か分からない破片が圧倒的に多かった。かろうじて判別できたのは、洗濯バサミや漁具、釣具、そして使い捨て容器類である。

参加者からは、「ごみが思ったよりも細かい」「粉々になっていて拾いにくい」という声が聞かれた。「この大きさなら魚の口にも入るだろう。こういう細かくなったプラスチックの問題を、今日、初めて実感した」と語る人もいた。

日韓の社員が英語で会話しながら一緒にごみを拾う姿も見られた。韓国の社員は、韓国でも飲料メーカーや化粧品メーカーなどプラスチック容器を使う企業が積極的に海ごみ拾いを展開し、巷ではジョギングしながらごみを拾う「プロギング」も人気だと語った。そしてやはり、今回の細かいプラスチックごみの多さには驚いていた。

カ·コーラはもともと多国籍の企業で、日韓両国の社員も、オンラインが主流となったコロナ禍以降は特に、毎週のようにミーティングで顔を合わせているという。

日本コカ·コーラ サスティナビリティー推進部の飯田征樹部長は「初の試みだが、普段から仕事仲間であり、こういう活動を通して(両社の従業員が)さらに仲良くなれる」と語った。

約1時間の清掃活動を終えて、4カ所合計、35リットルごみ袋で可燃ごみ96袋、不燃ごみ45袋を回収した。不燃ごみには、プラスチックごみのほか、缶やびんなどが含まれる。

普段の生活から出るごみが適切に処理されずに海に流れ着く

日本コカ·コーラは同様の清掃活動を毎年9、10月に実施してきた。米国の環境団体「オーシャン・コンサバンシー」主催の「国際海岸クリーンアップ(ICC:International Coastal Cleanup)」の一環で、世界中で複数の主体が同時期に実施している。ICCは、ただ拾うだけではなく、ごみの種類や量をデータとして集積して対策に生かすことを目指す市民調査である。

カ·コーラカンパニー(米国本社)が1995年にICCのスポンサーとなり、日本コカ·コーラは2007年から、コロナ禍で中止した2020年を除いて毎年、全国5社のボトラー社と一緒に各地の湖岸や海岸を清掃して、ICCに結果を報告してきた。

清掃活動の際には、「ポイ捨てのない社会」を目指すNPO法人グリーンバードから助言や協力を得ている。自社ビルがある東京都渋谷区で誕生した同NPOの活動資金を2008年から支援しており、相互に支え合う関係を築いて15年目になる。

米国本社が掲げるグローバル・ビジョン「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」に基づき、日本コカ·コーラは活動の3本柱を定めた。そこでも「パートナーとの協働」を「設計」「回収」と同列で重視している。

設計については、「い・ろ・は・す 天然水」などのペットボトル製品で、PET素材を水平リサイクルするボトルtoボトルと、PET素材の消費自体を減らす軽量化やラベルレスを推進している。

製品1本当たりのPET樹脂使用量を、2030年には2004年比で35%削減するという。2030年までに「100%サスティナブル素材」への切り替えを目指す。

飯田部長は、「単一素材でできているペットボトルを、きちんと資源として集めて、半永久的にリサイクルに回せるようになれば環境負荷も相対的に減っていく。日本のペットボトル回収率は高いが、ごく一部は残念ながらゴミとして流出してしまっている現実もある。海洋に出てしまう前に回収したい」と力を込めた。

清掃活動のために集まったコカ・コーラ日韓社員

秋ごとの清掃活動に参加してきた入社18年目の従業員は、「海岸によって落ちているものが本当に違う。やっぱり最近は海に行った時、ごみを拾って帰るようになった」と語った。

業務ではパッケージの見直しにも携わった。今はリサイクルしにくい複合素材であるパウチ容器入りゼリー飲料の扱いなどを見直しているという。継続して実施してきたごみ拾いから従業員の意識や行動が変化して、事業にも影響が及んでいることがうかがえた。<PR>

chiyosetouchi

瀬戸内 千代

オルタナ編集委員、海洋ジャーナリスト。雑誌オルタナ連載「漁業トピックス」を担当。学生時代に海洋動物生態学を専攻し、出版社勤務を経て2007年からフリーランスの編集ライターとして独立。編集協力に東京都市大学環境学部編『BLUE EARTH COLLEGE-ようこそ、地球経済大学へ。』、化学同人社『「森の演出家」がつなぐ森と人』など。

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キーワード: #プラスチック

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