ブラジル大統領選挙結果にNGOら「アマゾンと地球の勝利」

記事のポイント


  1. ブラジル大統領選でルーラ氏が現職のボルソナロ氏を破って当選
  2. ルーラ氏はアマゾン熱帯雨林の保護と気候変動対応を公約に掲げていた
  3. ルーラ氏の勝利を各国首脳や環境保護団体、ESG投資家らは歓迎している

ブラジル大統領選の決選投票で10月30日、ルーラ・ダシルバ元大統領が、現職のボルソナロ大統領を僅差で破って当選した。ルーラ次期大統領は、アマゾンの熱帯雨林の保護と気候変動対応を公約に掲げており、左派・ルーラ氏の勝利を各国首脳や環境保護団体、ESG投資家らは歓迎している。(北村佳代子)

ルーラ氏が当選して熱帯雨林の保護と気候変動対応を進める

「ブラジルは、気候危機との闘いにおいて、リーダーシップを取り戻す準備ができている。ブラジルと地球は、生きたアマゾンを必要としている」

ルーラ氏は30日、選挙後の勝利演説でサンパウロの支持者に語りかけた。ボルソナロ政権の4年足らずで、アマゾンの森林破壊が進行したことを受け、ルーラ氏は来年1月1日の大統領就任後、熱帯雨林の違法伐採、採鉱、土地収奪を取り締まることを約束した。

ロイターは、来週エジプトで開催予定のCOP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)に、ルーラ次期大統領の代表団が派遣される計画もあると報じた。

ブラジルは2021年10月のCOP26で、「2050年カーボンニュートラル」と、2028年までの森林違法伐採の撲滅を掲げた。しかし、2019年1月に発足したボルソナロ政権下では、森林の違法伐採や火災の要因となる焼き畑を取り締まるための予算は拡充されなかった。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、2019年から2021年にかけて、アマゾンの熱帯雨林喪失規模は約31000平方キロメートルに上った。

ブラジル国内では、ボルソナロ政権下の森林伐採が、世界の生物多様性の25%が生息するとされているアマゾンの熱帯雨林に、取り返しのつかないダメージを与えるのではないかとの意見が高まっていた。

ルーラ氏当選の結果を受け、スナク英首相はツイッターに「世界経済の成長から、地球の天然資源保護、民主的価値の促進など、英国とブラジルにとって重要な課題について、ともに働くのを楽しみにしている」と投稿した。

北欧最大の運用会社であるノルディア・アセット・マネジメントは、熱帯雨林保護の観点から2019年以来禁止していたブラジル国債の買い増しを今後解除する方向にある、とロイターは報じた。

同国の環境保護団体の連合組織であるブラジル気候観測所は、ウェブサイトに「ついに悪夢が終わる」との声明を公表した。別の海外メディアは、今回の選挙結果を受けて、環境活動家や気候変動の専門家が「アマゾンと地球の勝利」と歓迎したと報じた。

ルーラ氏は2003年から2010年まで、2期8年にわたって大統領を務め、国内の豊富な天然資源の価格上昇を背景に、平均で年率4%の高い経済成長を実現した。在任期間中に増えた税収で、貧困層への生活支援を拡充した。

その一方で、在任中に建設会社から賄賂を受け取ったとされる汚職事件で有罪判決を受け、前回2018年の大統領選挙では裁判所から立候補資格を停止されていた。今回、最高裁判所がルーラ氏に対する有罪判決を無効としたことで立候補し、貧困層を中心に支持を集めた。

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #気候変動

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