産後ママにリユース容器入り弁当を届ける「ホットス」

記事のポイント


  1. リユース食器のレンタル事業を展開するNPOがリユース弁当箱事業を開始
  2. 産後ママに手作り弁当を届ける
  3. リユースの仕組みが、人と人をつなぐ絆になっている

リユース食器のレンタル事業を手掛けるNPO法人スペースふう(山梨県富士川町、永井寛子理事長)は、産後間もないママさんなどを対象に、リユース容器入りの手作り弁当の宅配事業を開始した。普及が望まれるリユースの活用として注目される。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

「あずま袋で包んだリユース容器入り弁当を産後ママに届ける長池さん(写真右) 提供:NPO法人スペースふう」

地域をつなぐリユース弁当箱

スペースふうは、新型コロナ流行前にはイベントで使用するリユース食器を全国に年間500件貸し出していた。しかし、コロナ禍により各地でイベントが中止され、廃業の危機に陥った。そんな中、「リユースの灯を消すな!」という思いから、弁当容器のリユース化に着手した。

事業名は「hottos」(ホットス)。余裕がない産後ママの「ほっとしたい」というささやかな願いと、そんな産後ママに少しでも「ほっとするひとときを届けたい」という願いを込めたネーミングだ。

ホットス事業は、スペースふうが富士川町内に住むおおむね出産後6カ月以内の母親らにリユース容器に入れた弁当を届ける。必要ならば、同居する子どもも利用できる。配達は毎週木・金曜の週2日。回収・洗浄も同団体が行う。

弁当利用者は1食あたり100円を支払い、残りの費用は一般財団法人日本民間公益活動連携機構が指定活用団体である休眠預金等活用事業で賄われる。昨秋開始後、約半年の試行期間を経て、本格始動に踏み切った。ふうの長池伸子事務局長によると、利用した産後ママが次に出産する後輩ママに声かけし、口コミで広がるケースも多いそうだ。

手作り弁当の宅配は富士川町内のみだが、リユース弁当箱は全国へ貸し出している。形状の異なる3種類の中から選ぶことができ、レンタル料はいずれも1個100円(税込)だ。弁当箱が多数必要な行事にも対応できる。

リユースの手間は、人と人をつなぐ大切な役目

かつて弁当容器はリユースが当たり前だったが、今では使い捨ての弁当容器を見慣れてしまった。「脱プラ」といいつつもコロナ禍を言い訳に、使い捨てプラスチックは増える一方だ。これについて長池さんはこう話す。

「リユース弁当容器は使い捨て弁当容器を否定する立ち位置にいるわけではなく、状況や制約によって選択肢があることが重要だと思っています。ただ、このホットス事業を通して痛切に感じたことは、リユース弁当箱が『人を感じる』役割を果たしているということです」

「使い捨て容器は、食べたらすぐにポイとごみ箱へいきますが、リユース弁当箱は返す際に食べた感想やささやかな雑談もできる。弁当箱を洗う人たちの仕事を生み出すこともできるし、みんなで使う弁当箱だからと弁当箱(資源)を大切に扱うことにもなります。リユースの手間は本来人と人をつなぐ大切な役割を果たしていたのじゃないかと思います」。

リユース容器はプラごみを減らすだけでなく、関わる人たちをつなぐ絆にもなっているようだ。

環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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