サステナビリティ部員塾18期下期第2回レポート

株式会社オルタナは2022年11月16日に「サステナビリティ部員塾」18期下期第2回をオンラインとリアルでハイブリッド開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①企業事例:オムロンのサステナビリティ戦略

時間: 10:30~11:45

講師: 貝崎 勝氏(オムロン株式会社 サステナビリティ推進室 担当部長/General Manager)

オムロン・貝崎勝氏

オムロンの貝崎氏が、同社の中長期戦略とサステナビリティ取り組みについて紹介した。血圧計などで知られるオムロンだが、売上の6割弱は、BtoB向けFA(ファクトリーオートメーション)を支える制御機器事業が創出し、全売上の6割を海外が占める。同社サステナビリティ推進室は、社長直下ではなく、取締役会の直下に設置され、執行機関のサステナビリティ推進委員会の下に環境や人権などのプロジェクトを立ち上げることで、監督機能と事業実装の2つの役割を担っている。

社憲「我々の働きで我々の生活を向上しより良い社会をつくりましょう」やバリューなどの企業理念は、現場までしっかりと浸透するよう、各種教育ツールやダイアログのほか、企業理念の実践にチャレンジし続ける取り組みを表彰する「TOGA (The OMRON Global Award)」を毎年実施しており、社員数を超えるエントリーが集まっている。TOGAについては、講義参加者からさらなる詳細に関する質問も出た。

オムロンでは長期ビジョンや中長期経営計画の策定に際し、未来予測の「SINIC(サイニック)理論」を羅針盤に、各時代が求めるソリューションを創出してきた。長期ビジョン「SF2030」(2022年~2030年)では、事業戦略とサステナビリティ重要課題を「完全統合」し、既存4事業のKPIに加え、新規事業や人財づくり、脱炭素などの非財務KPIも設定している。また役員の中長期業績連動報酬に関しても、サステナビリティ指標を全体の20%に組み込んでいる。

最後に、同社創業者・立石一真氏の座右の銘「最もよくひとを幸福にするひとが最もよく幸福になる」という考え方は、綺麗ごとではなく、洋の東西・時代を問わず普遍的に求められる内容だ、とオルタナ編集長の森がコメントをした。

事例紹介 ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング

時間: 11:45~12:00

講師: 繁田 知延氏(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社 ショッパー&カテゴリー ショッパーマーケティングエグゼクティブ)

ユニリーバの繁田知延氏

「LUX」「Dove」などで知られるユニリーバでは、「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というパーパスの下、「地球の健康」「健康、自信、ウェルビーイング」「より公正でインクルーシブな世界」を柱に事業活動を展開している。プラスチックに関しては、2025年までに「非再生プラスチックの使用量半減」「プラスチックパッケージを100%再使用可能・リサイクル可能・堆肥化可能」「販売量よりも多くのプラスチックの回収・再生を支援」をグローバル目標に掲げている。

ユニリーバは、中国に続き日本でも、店頭での容器回収プログラム「UMILE(ユーマイル)」を始めた。ユニリーバ・ジャパンのLINE公式アカウントで友だち追加後、詰め替え製品の購入や、きれいに洗って乾かした使用済みの空容器を全国総計31自治体、112の小売店舗や駅構内に設置した回収ボックスに返却することで、エコグッズやLINEポイントとの交換や、ユニセフなどへの寄付が可能となる。なかでも、ウェブページ等で消費者への「洗浄・乾燥」の啓発に注力しており、その結果、回収品の約9割が、有価性を担保できる状態だと繁田氏は述べた。本プログラムへの参加者数は現在92万人に達し、すでに9万2000ポイントが応募されている。

一部の地域では、自治体と協力し、回収した資源をアップサイクルしてその地域に還元する取り組みも進めており、プラスチック容器の回収後どうなるのかをモノを作って可視化することで、取り組みへの参加促進につなげている。最後に繁田氏は、地域資源循環モデルの構築に向けて、業種に関係なく志を共にする仲間を常に募集していると呼びかけた。

②日本の「プラスチック新法」を考える

時間: 13:00~14:15

講師: 佐藤 泉氏(佐藤泉法律事務所 弁護士)

佐藤泉弁護士

「プラスチック新法」(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が、2022年4月に施行となった。同法の意義について、環境関連法を主な専門とする佐藤泉弁護士が解説した。新法は「設計・製造」「販売・提供」「排出・回収・リサイクル」の3段階で3R(リデュース、リユース、リサイクル)を促進し、サーキュウラーエコノミーへの移行を目指す。

新法は「規制」でなく自主的な取り組みを促す「促進法」であり、即効性を期待できるものではない。例えば製造段階ではリサイクルしやすい設計を奨励しているが、国外製造品は対象外だ。販売段階では、コンビニなどが自主的な取り組みを始めているが、レジ袋有料化のようなインパクトはまだない。

一方で資源価格の高騰によりペット樹脂など再生資源の奪い合いも起きており、上場企業はESG投資への対応からリサイクルの促進が求められる。新法は、環境への取り組みを加速させるビジネスチャンスでもある。

③WS(サステナビリティレポートの相互チェック)

時間: 14:30~15:45

講師: 森 摂(株式会社オルタナ 代表取締役 オルタナ編集長)

ワークショップでは、受講生が自社で発行しているサステナビリティレポートの特徴を発表した。それぞれグループに分かれて、参加者同士で、レポートの良い点や疑問点を話し合った。受講生からは、「誰に対してどの程度の情報を届けるべきなのか」「報告書とウェブサイトのすみ分けをどうするか」「社内浸透をどう進めるか」といった課題が共有された。また、受講生の3分の1が印刷物を廃止するなど、報告書のウェブ化が進んでいることが分かった。

④企業事例:りそなアセットマネジメントのスチュワードシップ戦略

時間: 16:00~17:15

講師: 松原 稔氏(りそなアセットマネジメント株式会社 責任投資部 執行役員 責任投資部長)

りそなアセットマネジメント・松原稔氏

りそなアセットマネジメントは資産運用会社として実績を持ち、運用残高は約40兆円、そのうち95%は企業年金や公的年金などのアセットオーナーからの資金を運用する。

2008年にPRIに署名、2021年にはパーパスを策定し、「将来世代に対しても豊かさ、幸せを提供」と掲げる。この将来世代の豊かさや幸せが、「インクルーシブな社会経済」「サステナブルな環境」「企業文化、企業のパーパス」だ。この3つをもとにして、あるべき社会を設定した。

しかし現在の世界は地政学リスクもあり、地域分断モデルに向かおうとしていると分析する。この方向を持続可能レベルへ修正していくために重要なポイントとなるひとつが将来を担う若者世代との対話だ。またインパクト投資も重要な手段のひとつになる。

資産運用の今後のあり方として、「ヒポクラテスの誓い」が参考になる。医者の職業倫理について書かれた宣誓文で、病院を経営する立場ではなく医者の立場を重視することなどが説かれている

資産運用の本質はサービスではなく、Fidelity(信任)となる。実際に、ウクライナ紛争が発生後、ロシアから撤退した企業と残留した企業とでは、撤退した企業のほうが株価パフォーマンスが良好だった。撤退することによって減損が発生するにも関わらずだ。

資本市場の考え方が変化する中で、企業の価値も変化してきている。

susbuin

サステナ経営塾

株式会社オルタナは2011年にサステナビリティ・CSRを学ぶ「CSR部員塾」を発足しました。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として新たにスタートします。2011年以来、これまで延べ約600社800人の方に受講していただきました。上期はサステナビリティ/ESG初任者向けに基本的な知識を伝授します。下期はサステナビリティ/ESG実務担当者として必要な実践的知識やノウハウを伝授します。サステナ経営塾公式HPはこちら

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