COP27:オフセット頼みの脱炭素にグリーンウォッシュの懸念

記事のポイント


  1. COP27では気候災害への「損失と損害」に対応する新基金で合意した
  2. 会期中には国連とISOが「ネットゼロ・ガイドライン」を発表した
  3. 「オフセットに頼る脱炭素、国際的には『グリーンウォッシュ』」とNGO

エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)は11月20日、2週間の予定だった会期を延長して閉幕した。最大の焦点は気候災害への「損失と損害」だったが、新基金の設立で合意した。議論の進捗や会場の雰囲気をCOP27に参加したNGO担当者に聞いた。(オルタナ編集部)

オルタナはCOP27閉幕直前の11月17日、同会議に参加中のWWFジャパン山岸尚之・自然保護室長を迎え、「SBL緊急セミナー」をオンラインで開いた。セミナーの要旨は下記の通り。

オフセットに頼る脱炭素、もはや国際的には「ウォッシュ」

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は11月8日、非国家アクター(企業、自治体、金融機関など)向けに国連として「ネットゼロ」の基準を発表した。2050年までのネットゼロを宣言する組織は増えているが、その定義が定まっておらず、国際基準を求める声が高まっていた。

国連はネットゼロに向けて非国家アクターを先導するキャンペーン「Race to Zero(レーストゥゼロ)」を2020年6月に立ち上げた。このキャンペーンには1万1309団体(2022年9月時点)が参加する。

脱炭素化への意欲は強いが、「ネットゼロ」の定義が定まっておらず、ネットゼロに向けた取り組みの信頼性も課題だった。そこで、今年3月にグテーレス事務総長が専門家組織を立ち上げ、国連のネットゼロの定義を話し合っていた。

グテーレス事務総長が発表した定義は10項目から成る。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示す1.5℃シナリオに沿うネットゼロ目標に向けて、5年ごとの計画を公開し進捗を管理することや、カーボンクレジットは自組織の削減目標に使ってはならないことを項目に入れた。

その他の項目は、「化石燃料の段階的廃止」「再生可能エネルギーの増加を目指すこと」、「自組織と異なる方針を持つ所属団体に積極的な気候変動対策を求めること」などがある。

この発表を踏まえて、NGOからは「カーボンクレジット」の危うさを指摘する声が上がった。「カーボンクレジットを多用しても、脱炭素化が進んでいないことが明らかになってきた。この定義で伝統的なオフセットは通用しない」との見方がある。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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