生物多様性COP15 日本の若者が注目する世界の「本気度」

記事のポイント


  1. 生物多様性のCOP15が12月7日から、カナダのモントリオールで始まる
  2. 一般社団法人「Change Our Next Decade(COND)」の若者たちが熱意を語った
  3. コロナ禍で膨らむ渡航費用を、クラウドファンディングでも募る

気候変動の国連会議COP27に続き、生物多様性のCOP15が12月7日から、カナダのモントリオールで始まる。日本で決まった「愛知ターゲット」の次の国際目標を定める重要な会議だが、国内の関心は高いとは言えない。ユースの立場から参加予定の若者たちは、「世界では生物多様性の損失が命に関わると本気で訴えている人たちがいる。その声を伝えたい」と強調。コロナ禍で膨らむ渡航費用を、クラウドファンディングでも募ろうとしている。(オルタナ編集委員=関口威人)

COP15準備会合でのユースの集まり(矢動丸さん提供)

■同世代の熱意や世界の矛盾を目の当たりに

国連の生物多様性条約締約国会議は2年に1回のペースで開かれ、2010年の日本開催のCOP10で10年間の国際目標「愛知ターゲット」を定めた。その後継となる「ポスト2020枠組み」を話し合うCOP15は2020年に中国で開催予定だったが、コロナ禍で延期や中断を繰り返し、最終の会合が中国を議長国としつつ、カナダで開かれることになった。

「生物多様性のCOPは、生き物や自然を守ることはもちろん、人々の権利を守るための会議なんです」

こう話すのは、日本のユースとして会議に参加する一般社団法人「Change Our Next Decade(COND)」代表理事の矢動丸琴子さんだ。

矢動丸さんは環境系の大学院在学中の2018年、国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)でアルバイトを始めたのがきっかけで、生物多様性条約会議の準備会合などに参加し始めた。そこは世界中の同世代の若者たちが、遺伝資源の問題などを含めて熱く議論をする場だった。

先住民や女性たちも含め、生物多様性が自分たちの命や暮らしに直結する問題だとして、真剣に行動をする。矢動丸さんはそんな参加者たちの姿を見て「心を打たれた」。一方で、日本の環境活動が「趣味の延長」に思え、このままでいいのかと自問した。

それから、大学院を休学する覚悟を決め、この分野で活動に打ち込む決意をした。通算2年間休学し、COP15に向けて仲間たちと一緒に立ち上げたのがCONDだ。

■ユースの視点から国際会議の「生の姿」を発信

COP15への思いを語る「Change Our Next Decade」の矢動丸琴子さん(右)と高田健司さん

COP15では、2030年までに陸と海の30%の保全を目指す「30by30」と呼ばれる目標などが議論されている。

これについて「何を基準に決められているんだろう」と素朴な疑問を抱きつつ、関心を寄せているのがCONDの一員でもある高田健司さんだ。

高田さんはサンゴ礁の研究をしている大学院生で、自分の科学的な知識を生物多様性保全に生かしたいと考えて活動に加わった。今年6月にケニア・ナイロビで開かれたCOP15の準備会合に初参加し、「科学的な知識を持った上で議論を進めていく人材が重要だ」と確信した。

これまでのCOPの議論は、「3歩進んで2歩下がる」(IUCN-Jの道家哲平事務局長)ような堂々巡りの状況だと報告されている。こうした中、高田さんはカナダの最終会合でユースとしての発信や交流をしながら、「『陸』に比べて注目の少ない印象のある『海』の議論をしっかり追っていきたい」という。

CONDの団体名には「私たちの次の10年を変える」という意味を込めた。COP15で採択される予定の「ポスト2020枠組み」がまさに「次の10年」の世界だ。「ユースの視点から国際会議を身近に感じられるように発信して、日本ではまだ十分に知られていない生物多様性を巡る世界の声を日本に届けたい」と矢動丸さんや高田さんは意気込む。

会場がカナダに変更され、渡航に関わる費用が当初の見積もりを大幅に超えてしまった。そのため、メンバー4人ほどの必要最低限の旅費・宿泊費と現地でのブース出展費用の支援をクラウドファンディングで募っている。

まずは300万円を目標として、COP開催中(12月7〜19日)も募集を続ける。12月27日までの期限に達成できなければ、それまでの支援金を受け取れない「All-or-Nothing方式」の挑戦だ。支援者には、帰国後に開催するオンライン報告会や交流会に参加できるなどのリターンがある。クラウドファンディングのページは以下。

https://readyfor.jp/projects/COND_COP15

sekiguchitaketo

関口 威人(オルタナ編集委員)

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に防災、環境、経済、地方自治、科学技術などをテーマに走り回る。一般社団法人なごやメディア研究会(なメ研)代表理事、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集委員、日本環境ジャーナリストの会(JFEJ)正会員、NPO法人「震災リゲイン」理事。

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キーワード: #生物多様性

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