商品の環境性、どう表示すれば消費者に伝わるのか

記事のポイント


  1. 環境配慮を主張する根拠が明確に示されている商品は決して多くない
  2. 消費者は「なんとなく」環境にやさしいであろう商品を買うしかない状況だ
  3. 商品の環境性を正確に提示していくにはどのようなやり方があるのか

自分たちが買うものはなるべく環境などに配慮した商品を選びたい。そんなニーズが高まる一方で、環境配慮を謳う根拠や、どのくらい環境にやさしいかが明確に示されている商品は決して多くない。いま消費者は「なんとなく」環境にやさしいであろう商品を買うしかない状況になっている。では商品の環境影響を消費者に分かりやすく、正確に提示していくにはどのようなやり方があるのだろうか。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

複雑なCO2排出量の算出を無料で可能にした「2030 Calculator」

スウェーデンのフィンテック企業のDoconomyが開発した二酸化炭素排出量を計算できるオープンプラットフォーム「2030 Calculator」。国連が掲げる2030年までに二酸化炭素排出量を半減させるという目標を達成すべく、消費者にとってはわかりにくい二酸化炭素排出量の数値を手軽に誰でも計算できるツールを開発した。

素材や輸送方法など簡単な選択肢を選ぶだけで算出が可能だ。オープンプラットフォームとして無料で提供することで、今まで計算のノウハウがなかった中小企業や個人商店などでも算出できるようになり、商品パッケージに簡単に明記することが可能になった。

環境影響の可視化のハードルを低くすることで、環境影響が明記された商品を増やし、消費者も選べる商品を増やしていくことを狙った事例だ。

世界初のカーボンリミット付きクレジットカード「DO BLACK」

同じくDoconomyが開発した「DO BLACK」は、決済データから商品・サービスの購入がもたらすCO2排出量が自動計算される。個人のCO2排出量の年間上限が設定されており、上限に達すると決済ができなくなるシステムだ。

購買した商品の環境影響を計算するアルゴリズムを活用し、自分が買った商品にまつわるCO2排出量をすぐさま確認することができるため、商品を購買する際の意識を高めることができる。

また商品の購入だけでなく、寄付やCO2削減プロジェクトへの投資も可能で、自身のCO2排出量に応じたオフセットができる仕組みにもなっている。大量消費を加速させる存在だったクレジットカードが、消費によるCO2排出量を見える化したことで、購買を通じた環境意識の啓発に成功した事例だ。

広がりをみせる環境影響の可視化

靴とアパレルのブランド「allbirds」は、 すべての商品に二酸化炭素排出量を計測した数値を明記。二酸化炭素排出量の計算ツールも公開し、ラベルデザインにいたるまで一括して無償で提供し、業界全体へのサステナブルな変化を呼びかけている。

いま日本でもさまざまな商品やサービスでCO2排出量などの環境影響を可視化して表示する取り組みが増えつつある。

しかし環境影響を数値化するための測定方法などには明確な基準やルールがなく、各々のやり方でバラバラに取り組んでいるため、違うメーカー同士での比較などは出来にくいのが現状だ。消費者にとって判りやすく、選びやすい。

そんな統一された基準をどう開発して、浸透させていけばよいのか。日本のエシカル消費をさらに進めるカギは、そこにあるのではないだろうか。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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