ラッシュ、非化石証書で再エネ100%達成へ

記事のポイント


  1. 日本法人ラッシュジャパンが2022年度に自社で使用する電力を100%再エネに切り替えた
  2. 再エネ電力の使用のほか、残りは非化石証書を活用
  3. 証書を活用した再エネシフトのポイントとは

■UPDATER×ラッシュジャパン

英国発ナチュラルコスメブランドLUSHの日本法人ラッシュジャパンは、2022年度に自社で使用する電力を100%再エネに切り替えた。工場や店舗などの6拠点は再エネ発電所から電力の供給を受け、残りは非化石証書を活用して実質再エネを達成。証書を活用した再エネシフトのポイントを聞いた。 

英国発ナチュラルコスメブランドラッシュは、自然素材を使ったコスメやバス用品の製造や販売、動物実験を行わない製品開発などを通して、持続可能な社会の実現を目指している。日本法人のラッシュジャパンは1998年設立で、全国に76店舗(2022年11月現在)を展開。再エネ電力の調達に積極的に取り組んでいる。

再エネに切り替えたLUSH池袋駅前店

大道清剛氏(ラッシュジャパンアースケアマネージャー)
窪田とも子氏(ラッシュジャパンアースケアスーパーバイザー)
間内賢氏(UPDATER 事業本部 マネージャー)

原発に頼らない電力調達進める 

─2019年に本社工場の電力会社をUPDATER(みんな電力)に切り替えました。何を重視しましたか。

窪田:ラッシュジャパンは2011年3月11日に発生した東日本大震災を受け、原子力発電に依存しない電力調達を進めてきました。2016年の電力小売自由化を機に、さらに再エネシフトを加速させることになりました。UPDATERは電源構成の約80%を再エネが占めていました。これは新電力の中でも突出した比率で、切り替えの決め手になりました。

現在は本社工場とオフィスの2拠点の電力を太陽光と風力で、4店舗(東京・池袋、静岡、広島、大阪・心斎橋)を太陽光やバイオマスなどの再エネで100%賄っています。

大道:他の72店舗については、UPDATERを通して再エネ由来の非化石証書を調達し、2022年度にラッシュジャパンが事業で使用する電力の「実質再エネ100%」を達成する見込みです。 

間内:非化石証書は「発電時に温室効果ガスを排出しない」という価値を証書にしたものです。証書を購入すると間接的に再エネを導入したと見なされるため「実質再エネ」という呼び方をします。 

─非化石証書の意義を、どのように考えていますか。 

大道:ラッシュジャパンの店舗は、多くがショッピングモールなどにテナントとして入っており、当社の意思だけで電力会社を選べないのが現状です。そこで非化石証書を調達することで、実質再エネを実現させました。 

なぜコストをかけて証書を調達するのか。その意味を一人ひとりの従業員が考えることで、社内の再エネに対する関心を高める狙いもあります。こうして全社的な意識を上げることが、今後の再エネ化の加速につながると考えています。実際にいくつかの店舗は、切り替えに向けて交渉を始めています。

間内:非化石証書をどう位置付けるかが、とても重要だと思います。再エネ電力の調達方法は大きく4つあります。 


①太陽光や風力などの自家発電設備を導入 
②PPA(電力販売契約)モデルの利用 
③再エネ電力事業者への切り替え(一般的な実質再エネは ④と本質的に変わらない) 
④非化石証書 


優先順位として、1~3で間に合わない部分を非化石証書で補うのが本来の在り方だと考えています。 

固形のマッサージオイル「マッサージバー」。ラッシュ製品は再エネで製造されている 

気候変動対策と生態系保全を 

─再エネ電力への切り替えは、気候変動対策という意味合いも強いと思います。ラッシュは全世界で、オフセットなしで「クライメートポジティブ」を達成するという野心的な目標を掲げていますね。

大道:クライメートポジティブとは、温室効果ガスの削減量が排出量を上回ることです。この状態を実現することが、気候変動の緩和にポジティブな影響をもたらします。これに生物多様性の回復を目指す「ネイチャーポジティブ」も合わせて、世界全体で取り組みを進めていきます。 

ラッシュは「地球をよりみずみずしく、豊かな状態で次世代に残す」というブランドパーパスを掲げています。私たちは自然由来の原材料を多く使用しており、地球環境に大きく依存しています。メーカーとして生産活動を行うことで、温室効果ガスも排出してしまいます。これらの負荷をどれだけ最小限に食い止められるのかが、企業の責任として強く問われています。 

─生態系への影響も考慮しているのですね。 

大道:ラッシュジャパンは再エネ電力に切り替えることが地球環境への負荷を軽減し、商品を購入するお客さまも含めて皆が幸せになれると考えています。 

ただし、再エネであれば何でも良いわけではなく、大規模な森林伐採などの環境破壊を行っていない発電所から調達することが大切です。 

間内:UPDATERは「顔の見える電力」を掲げ、全国約600カ所の再エネ発電事業者と直接契約し、電力を調達しています。 

独自の調達ポリシーを掲げ、要件の中には「電源開発にあたり地域の自然環境に大きな影響を与えていない」、「地域住民に受け入れられるよう合意形成がなされている」─などが含まれています。 

窪田:ブロックチェーン技術を活用したトラッキングシステムなど、調達先の見える化は、とても安心感があります。

大道:まだ具体的なプランを発表できる段階ではありませんが、今後はより長期的な再エネ調達手段としてバーチャルPPAなども含めて検討していきたいです。ソーラーシェアリングなど、あらゆる方法を検討しながら、再エネ電力のさらなる拡大を進められればと思います。

その際にもどのような環境で発電されているのか、しっかりと検証しながら選んでいきたいと考えています。 

(PR)UPDATER

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #サステナビリティ

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