記事のポイント
- 環境・社会課題の解決を資金使途とするSDGs債を発行する自治体が拡大
- 2022年にSDGs債を発行した自治体は東京都や福岡市など18自治体
- 横浜市は12月20日、約100億円のサステナビリティボンドを発行した
環境改善や社会貢献に何らかの効果のある事業を資金使途とする債券「SDGs債」を発行する自治体が増えてきた。横浜市が12月20日に発行したことで、2022年にSDGs債を発行した自治体は、東京都や埼玉県、長野県、福岡市など合わせて18自治体に広がった。背景には調達の多様化がある。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)
SDGs債はESG債とも呼ぶ。環境改善や社会貢献に何らかの効果のある事業を資金使途とする債券を指す。資金の使途に応じ、グリーンボンド(環境債)、ソーシャルボンド(社会貢献債)、サステナビリティボンド(環境及び社会貢献債)などに分類される。
日本証券業協会によると、2021年の企業や自治体などのESG債発行額は、2兆9270億円に上がる。
一般の債券と異なり、資金使途、プロジェクトの選定・評価プロセス、資金の管理などに関する情報を投資家に開示することが望ましいとされる。外部評価機関から認証を受けることもある。
日本取引所グループ「ESG債情報プラットフォーム」によると、2016年9月国際協力機構による発行以来、現在までのESG債数は724、その内自治体は41(構成比6%)だ。
2022年にESG債を発行した自治体は、12月20日の横浜市を加えて18自治体に上る。
1月:福岡市(グリーン)、2月:東京都(ソーシャル)、4月:滋賀県(サステナビリティ・リンク・ボンド)、8月:川崎市(グリーン)、9月:埼玉県、北九州市(共にサステナビリティボンド)、兵庫県、仙台市、静岡県(全てグリーン)、10月:長野県、三重県、東京都、神奈川県、大阪府(全てグリーン)、12月:愛知県、京都市(共にグリーン)、名古屋市(SDGs債)、横浜市(サステナビリティボンド)。
■横浜市は100億円のサステナビリティボンド発行へ
横浜市は12月20日、サステナビリティボンド(総額100億円)を発行した。環境課題、衛生・教育・福祉等社会課題解決へ使途する。
横浜市のサステナビリティボンドの使い道は主に2つだ。一つ目は温暖化対策を始めとする環境課題の解決を目指すグリーンプロジェクト(グリーン輸送による温室効果ガスの削減)。
もう一つは、衛生・教育・福祉などの社会的課題の解決を目指すソーシャルプロジェクト(インフラ施設の整備、改修 保育所等整備、特別養護老人ホーム整備、地域ケアプラザ整備、小中学校整備、児童福祉施設整備、障害者支援施設整備)だ。
同市は6月、「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン」を策定した。市債発行にあたって市場ニーズに合った手法の多様化を進め、安定的な調達に取り組むと明記した。
金融市場におけるESG投資へのニーズを踏まえ、ESG債(サステナビリティボンド)を発行するに至った。
発行にあたり「横浜市サステナビリティボンド・フレームワーク」を作成した。「調達資金の使途」「プロジェクトの評価・選定プロセス」「調達資金の管理」「レポーティング」の方針を定めた。
同市は、フレームワークが国際資本市場協会(ICMA)の「グリーンボンド原則2021」、「ソーシャルボンド原則2021」「サステナビリティボンド・ガイドライン2021」、環境省の「グリーンボンドガイドライン(2022 年版)」並びに金融庁の「ソーシャルボンドガイドライン(2021年版)」に適合していることの認証を、格付投資情報センターから取得している。