サステナ担当リレーコラム:メルカリ

記事のポイント


  1. メルカリは東大と連携して、事業の「ポジティブインパクト」を定量化
  2. 「ネガティブインパクト」を大きく上回ることを証明した
  3. ポジティブインパクトを定量化した経緯を担当者が語った

サステナ担当者リレーコラム(31)

企業のサステナビリティ担当者のリレーコラムです。参加するのは、14社のサステナビリティ/CSR担当者の皆さん。SDGsや脱炭素など、サステナビリティの潮流は高まるばかりです。CSR活動もますます重要になっています。各企業の担当者には、「自社の一押し活動」から日々の悩みなどを書いていただきます。第31弾はメルカリの経営戦略室 ESGスペシャリストの石川真弓さんです。

*CSRリレーコラム参加企業一覧

フジテレビジョン
日本航空
セブンアンドアイホールディングス
リクルート
千代田化工建設
リコージャパン
帝人
ゴールドマン・サックス
三菱地所
メルカリ
ユーグレナ
パナソニックホールディングス
リクシル

気候変動は事業のリスクだけでなく機会
「ポジティブインパクト」を示すためのメルカリの方法論

ポジティブインパクト、つまり事業を通じて生まれた環境や社会への貢献度を定量的に示すことはできないか。

気候変動における企業評価においては、現状は「リスク」のみフォーカスされている傾向にあります。企業のScope 1/2/3はどのくらいで、2030年までにどの程度削減できるのか、削減目標を設定してちゃんとアクションを起こしているのか、それができていない企業の評価は低くなる一方です。

つまり今は、いかに「ネガティブインパクト」に対応するかが問われていますが、もっと「ポジティブインパクト」にも着目されても良いのではないでしょうか。

例えば、排出削減に貢献する省エネ製品を開発しても、売れば売るほどそのメーカーのネガティブインパクト(Scope3)は増える一方です。

本来であれば、このような環境貢献に資する製品やサービスも「ポジティブインパクト」として評価されて、ビジネスが推進されると良いですよね。

そのためには、その「ポジティブインパクト」について、まずは定量的に示すことが必要だと考えました。

メルカリは、2022年のサステナビリティレポートで、初めて環境に関するポジティブインパクト(メルカリの事業を通じて生まれた環境貢献量​​)の算出・開示を行いました。

メルカリの2022年サステナビリティレポートから抜粋 

メルカリの中で最も取引量が多いの衣類カテゴリーです。このカテゴリーを対象に算出した結果、メルカリJPとメルカリUSのお客さまがメルカリで衣類を取引したことによって、2021年は約48万トンのCO2の排出を回避できたということを示すことができました。

「使わなくなった衣類等が捨てられずにメルカリで取引されリユースが推進されれば、環境負荷を減らすことができる」というのは、感覚的には理解できる気がします。

では、「どのくらい環境負荷を減らしているの?」を数字で定量的に示すための根拠が必要です。

そのための算出ロジックづくりが必要で、そのロジックが「盛りすぎてないか」「嘘くさくないか」という観点もクリアしていく必要があります。

CO2の算出根拠には、LCA(=製品ライフサイクル:生産・流通・使用・廃棄)を用いています。衣類が作られ、売られ、利用され、廃棄されるごとに発生するCO2をそれぞれ考慮しています。新品の代わりに利用されたと仮定したことで回避できるCO2排出量を、調整係数をかけて算出しています。

衣類のLCAは環境省が出しているものを使えば良いですが、家電製品などはLCA情報に乏しくメーカーや製造年数によってLCAが変わります。

中古品をメルカリで購入したところで新品の洋服が全く置き換わるわけではないので、その調整係数をどうするかという問題もあります。このロジックの話は、アカデミックな領域にも関わってくるのでなかなか複雑です。

我々サステナビリティチームのメンバーだけでは、このロジックづくりに限界がありました。東京大学 価値交換工学社会連携研究部門の先生に監修いただくことでクリアしていきました。(ちなみに私は理系の素養がまったくないので、理解するだけで精一杯でした)

こうして開示できた、メルカリの事業が生み出すポジティブインパクトは、ネガティブインパクト(企業が排出するScope 1/2/3)を大きく上回ることが定量的に示すことができました。メルカリの事業成長がそのまま、循環型社会の体現であると言えたのではないかなと思います。

今後は、環境省の「デジタル技術を活用した脱炭素と循環経済を同時に達成する資源循環システムの実証事業」に採択され、この事業のもとで算出カテゴリーの拡大と、ロジックの精緻化に目下取り組んでいるところです。

あわせてそのためのリユース意識の定着と、サステナブルな行動変容を促すための「メルカリエコボックス」を開発し、実証実験も行っています。

「リユースをあたりまえ」にする行動が定着していけば、環境負荷も減り、循環型社会の実現に近づくことができるのではないかと考えています。

石川 真弓:
株式会社メルカリ 経営戦略室 ESGスペシャリスト
2018年メルカリ入社。 PRチーム、ブランディングチームを経て現職。サステナビリティレポートの作成、TCFD提言に伴う情報開示、ESG委員会の運営、ポジティブインパクトの算出と開示、メルカリエコボックスの開発、自治体連携、教育プログラムの推進等、さまざまなESGプロジェクト推進を担当。

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キーワード: #脱炭素

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