シック・ジャパン、「3つのP」でSDGs活動を推進へ

ウェットシェービング業界シェアトップのシック・ジャパンは環境配慮型メーカーになるため舵を切る。全部門の代表からなる「SDGsチーム」を立ち上げ、全社で推進する。脱・使い捨てプラスチック、サーキュラ―エコノミーの推進、ダイバーシティ&インクルージョンなど3本柱で取り組む。(オルタナS編集長=池田 真隆)

シック・ジャパンのSDGsチームを率いたマーケティング本部PR&コミュニケーションコーディネーターの今泉理恵子さん

2022年に日本に上陸して63年目になるシック・ジャパンは、国内で男性用・女性用合わせて5種類以上のシェービングブランドを展開する。業界シェアはトップで、男性ユーザーは約800万人(日本の男性の約5人に1人)を誇る。

そんな同社は2022年5月、社内でSDGsに特化したプロジェクトチームを立ち上げた。メンバーは9部門から部門長ら含め代表社員23人が集結した。このチームの目的は、シック・ジャパンとしての「SDGsアクション」を見つけることだ。

同社は2015年に北米や中南米など世界50カ国以上で化粧品ブランドなどを展開するエッジウェル・パーソナル・ケア(以下エッジウェル)の日本法人になった。それ以来、シック・ジャパンでは、エッジウェルが2015年に制定したサステナビリティビジョンに基づき活動してきた。

グローバル企業の一支社として取り組んできたが、国内シェアトップのメーカーとして自社のSDGsアクションを定めることが社内だけでなく業界の変革にも影響を及ぼすと考えた。

SDGsチームを率いた、同社マーケティング本部PR&コミュニケーションコーディネーターの今泉理恵子さんは、「シック・ジャパンとして、SDGsの取り組みをリードしていくことは社会全体、そして、自社にとっても持続可能な成長と成功の観点から重要だと考えました」と話す。

各プロジェクトメンバーが事業活動とSDGsの紐づけを行ったり、有識者を招いて社内セミナーを開いたりして、SDGsの最新の潮流について学びを深めた。そうしてSDGsに関する意識のばらつきを整え、社内ワークショップを開いた。自社としてSDGsのどの目標に最も注力すべきなのか、各プロジェクトメンバーが意見を出し合った。

今泉さんは全社でSDGsアクションを洗い出した手応えをこう話す。

「SDGsと事業内容を照らし合わせることで、普段の業務がSDGs 17目標とどのように結びつくのか改めて考えることができました。さらに、全部門参加型のプロジェクトチームを構成したので、他部署の活動を十分に分かった上で自社の方針を決めることができました」

このレポートは、「新しいコミュニケーションツール」と位置付ける。「お客様だけでなく、社員、そして社員のご家族を意識して製作しました。持続可能な社会に向けて世界全体で取り組んでいる共通のゴールに向けて、シック・ジャパンとしての関わり方を示しました」。

脱・使い捨てプラスチックは2026年10月まで

注力するSDGsの目標は、「プラネット」「プロダクト」「ピープル」の3領域に分けた。プラネットでは、「環境配慮型メーカーとしての責任」を強調した。脱・使い捨てプラスチックは2026年10月まで、再生材の使用は2023年10月までに取り組んでいくことを目標に掲げた。

シック・ジャパンは2021年から32の主力製品の内25品のパッケージ素材をプラスチック材から再生材への切り替えた(2022年12月1日時点)。この切り替えによって、約90%のプラスチック量の削減につなげた。

サステナブル素材を使った製品も開発した。それが、2年以上の開発期間を経てつくった「エクストリーム3バンブー」だ。これは手に持つ「ハンドル」部分に竹素材(約70%)を使った。残りの30%は防水・防カビ効果のあるコーティング剤だ。

エクストリーム3バンブー

刃の部分には75%リサイクルスチール(ステンレス刃物鋼)を使い、フレームはリサイクルプラスチックを80%使った。

竹は成長が早く、伐採しないと周囲の樹木の健全な成長を阻害してしまう。この「放置竹林問題」に対応した製品だ。

旧パッケージのセール販売で廃棄削減

プロダクトについては、「サーキュラ―エコノミーの推進」を重視した。特に廃棄削減に関しては、「Act Green」と称した活動を行う。これは、旧パッケージ製品のセール販売だ。

4月22日の「アースデイ」に合わせて特設サイトで在庫がなくなるまで販売した。今泉さんは、「今年初めての取り組みでしたが、結果は好評で、ほとんどの製品が完売しました。お客様にもプロジェクトの目的を理解してもらえたと思います。セール販売に限らず、資源の有効活用を広げる複数の選択肢を視野に入れ、Act Greenの第二弾も検討しています」と話す。

2022年から「ムダ毛」という表現を廃止

最後のピープルは、多様性の訴求だ。2021年3月、「#BodyHairPositive」と題した広告キャンペーンを始めた。ボディヘアについて気軽に話せる空気感の醸成を狙った。

今泉さんは、「体毛に関する価値観は変化していて、剃る・整える・残すなど選択肢は広がっています。一概に体毛は剃るもの、といった固定観念に囚われるのではなく、ヘアスタイルやファッションと同じように体毛も自分らしく整え楽しむ皆様を応援する企業でありたいと考えています」とこのキャンペーンを実施した経緯を説明する。

このキャンペーンに合わせて実施した国内15歳~29歳の女性664人へのアンケートでは、88.7%が「ボディヘアの有無は個人の自由であるべき」と回答した。一方、83.8%は「ムダ毛はケアすべきもの」という固定観念が存在する、と回答しており、固定観念が根強いことが明らかとなった。

2023年もこの啓発を続け、今後同社が展開するすべてのチャネルで「ムダ毛」という言葉を使わないことを宣言し、既存の公式Webサイトでも表現の変更を進めている。

今泉さんは、「アンケート結果にも見られるように、毛は無駄だと一方的に決めつけることは、社会情勢にそぐわなくなってきました。このキャンペーンを始める時には、従来語られることの少ないセンシティブな話題という点もあり、皆様に私たちのメッセージを受け入れてもらえるか不安な部分もありましたが、『よく言ってくれた』、『そういう考え方が広がるといいな』というポジティブな反響が多くありました」と述べた。

シック・ジャパンでは今回製作した「SDGsレポート2022」をもとにSDGsアクションの改良に務める。社内外からのフィードバックを商品開発や業務改善に取り入れ、SDGsに関しても業界のけん引役を目指す。<PR>

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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