今後10年の最大リスクは「気候変動対策の失敗」

記事のポイント


  1. 世界経済フォーラムは「グローバルリスク報告書 20023年版」を発行
  2. 今後2年間と10年間で、国際社会が最も警戒すべきリスクを報告している
  3. 長期的には「気候変動の緩和策や適応の失敗」が最大のリスクだとした

世界経済フォーラム(WEF)は1月11日、「グローバルリスク報告書 20023年版」を発行した。同報告書は今後2年間と10年間で、国際社会が最も警戒すべきリスクを報告している。2023年版では、「生活費の危機」を最大の短期的なリスクとし、長期的には「気候変動の緩和策や適応の失敗」が最大のリスクだとした。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「グローバルリスク報告書 20023年版」

グローバルリスク報告書は、ダボス会議の開催に先立ち公表された。

今後2年間の最大リスクは、「生活費の危機」だ。パンデミックと欧州で起きている戦争がエネルギー、インフレ、食料および安全保障の危機を再び前面に押し出し、さらなるリスクを芋づる式に引き起こしている、と報告書は指摘する。

長期的リスクについては、トップ10の6つが環境関連だ。報告書は「今後10年で、世界が気候変動の緩和策や適応策でより効率的に協調しなければ、地球温暖化と環境の破壊が続く」としている。

報告書では、リーダーたちに「短期的そして長期的な視点のバランスを取りながら、連携的かつ断固とした行動」を取るように呼びかけている。緊急を要する協調的な気候変動への対応に加えて、財政的安定、テクノロジー・ガバナンス、経済発展、そして調査、科学、教育、医療に対する投資の強化をめざし、各国間そして官民間で連携して取り組むことも勧告している。

チューリッヒ・インシュアランス・グループでサステイナビリティリスク部門のトップを務めるジョン・スコット氏は、「気候変動による影響、生物多様性の喪失、食料安全保障と天然資源の消費の相互作用は危険な組み合わせだ。大きな政策転換や投資が行われなければ、これらの組み合わせは生態系の崩壊をさらに加速させ、食料供給を危険にさらし、自然災害の影響を増幅させ、気候変動の緩和策のさらなる進捗を制限するだろう」と、コメントしている。

●今後2年間のグローバルリスク トップ10
1 生活費の危機
2 自然災害と極端な異常気象
3 地経学上の対立
4 気候変動緩和策の失敗
5 社会的結束の浸食と二極化
6 大規模な環境破壊事象
7 気候変動への適応(あるいは対応)の失敗
8 サイバー犯罪の拡大とサイバーセキュリティの低下
9 天然資源危機
10 大規模な非自発的移住

●今後10年間のグローバルリスク トップ10
1 気候変動緩和策の失敗
2 気候変動への適応(あるいは対応)の失敗
3 自然災害と極端な異常気象
4 生物多様性の喪失や生態系の崩壊
5 大規模な非自発的移住
6 天然資源危機
7 社会的結束の浸食と二極化
8 サイバー犯罪の拡大とサイバーセキュリティの低下
9 地経学上の対立
10 大規模な環境破壊事象

■ 「グローバルリスク報告書 20023年版」(英語)

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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