自治体のNPO支援でマッチング寄付つきクラファンが広がり

記事のポイント


  1. 大阪府はNPOなどの支援にマッチング寄付つきクラファンを活用する
  2. 村上財団の提案が機に、行政がカバーしきれない課題の解決を支援へ
  3. 全国知事会の「優秀政策」に選出、徳島市でも同様の取り組みを行う

大阪府は2020年度からNPOなどへの活動支援を通じた社会課題解決事業を行う。21年度からマッチング寄付つきのクラウドファンディングでの資金調達を導入する。この事業は全国知事会での2021年度の優秀政策に選ばれた。マッチング寄付を行う村上財団は昨年8月、徳島市とも連携した。社会課題を解決する新たなスキームになりそうだ。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

大阪府が実施するNPOなどへの活動支援を通じた社会課題解決事業のスキーム

■村上財団の提案がきっかけに

マッチング寄付つきのクラウドファンディングでは、NPOなどがクラウドファンディングで資金調達し、団体や企業がその調達額に上乗せして寄付する。

大阪府が事業を始めたきっかけとなったのは、村上財団(東京・渋谷)からの提案だった。財団は創立以来、社会課題解決を目指す非営利団体を支援してきた。その一環でマッチング寄付を行っている。2018年に認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施した西日本豪雨被災者支援活動で初めて実施した。

村上フレンツェル玲代表理事は「(マッチング寄付は)行政がカバーしきれていない社会課題を解決するNPOと行政をつなぐことができる支援手段だと考えて、大阪府に提案した」と提案したいきさつを説明する。20年度は自己調達と財団からの寄付のみだったが、21年度から現行のクラウドファンディングと併せて行うようになった。

21年度は応募が23件で採択は5件、22年度は応募が17件、採択は7件。22年度は、マッチング寄付を加えた総額が約4800万円となった。

■資金だけではない支援も、村上氏「さらなる広がりを」

支援は資金だけにとどまらない。大阪府や村上財団は広報支援を行う。23年度のクラウドファンディング事業者に採択されたCAMPFIRE(東京・渋谷)は、クラウドファンディングでの資金調達のサポートも手掛ける。

今回使用するプラットフォーム「GoodMorning」はソーシャルグッドに特化する。担当する大内千香子氏は「プロジェクトの伝え方や今後のファンドレイジングなど、各団体のニーズに合ったお手伝いをしていく」と話す。

村上氏はこういった行政主導のマッチング寄付つきのクラウドファンディングにについて「さらなる広がりを期待したい」と言い、次のように話す。

「行政のセーフティーネットからこぼれた課題は、行政だけでは解決しづらいこともある。そういうときに力となるのがNPOなどの社会課題解決を目指す団体だ。当財団は昨年、徳島市とも連携したが、さらなる自治体との連携を進めていきたい」

■徳島市でもマッチング寄付つきクラファン

徳島市も同様のスキームでの支援を行う。市では「徳島市協働による新たなまちづくり事業」を行っていて、19年度の事業からクラウドファンディングの活用を始めた。

昨年8月9日には、市と村上財団が「地域課題の解決に取り組む民間団体の活動支援」で連携協定を締結した。マッチング寄付の第1号には、「徳島市協働による新たなまちづくり事業」の令和4年度に選定された動物福祉のプロジェクトが選ばれた。

事業を実施する徳島市市民協働課担当者はクラウドファンディングでの展開についても「最初のきっかけは新しい財源という視点だったが、続けている中で広報にもつながっている」と手ごたえを感じている。

今後、徳島市が情報発信や団体へのサポートなど、村上財団はファンドレイジングへの助言などを行う。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #寄付

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