コロナ禍のNPO、現場の活動に制限もオンライン化で活路

「コロナ禍はなんとか乗り越えたが今後の見通しまで立てられない」。そんなNPOの声が、JCNE(日本非営利組織評価センター)に寄せられている。コロナ禍は人々の共感・連帯を生み、一部の分野では寄付の増加につながった。その一方で、以前からあった社会問題をさらに悪化させ、NPOの支援現場を感染対策で翻弄した。NPOは社会問題の変化に柔軟に応じたが、中長期計画を立てることの難しさが浮き彫りとなった。(日本非営利組織評価センター=村上佳央)

日本ファンドレイジング協会の調査によると、2020年時点で日本の寄付総額は1兆2000 億円に上り、日本人の44%が寄付を行っている。コロナ禍前と比べて「身近な人との助け合い」「見知らぬ他者との助け合い」が必要だと思った割合はそれぞれ43.6%、29.6%となり、助け合いの意識の醸成が進んだ。

■ 貧困支援への期待高まり、寄付額が増加

20年以上にわたって貧困問題の解決を目指す認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい(東京都)は、コロナ禍で「存在意義を試された」と振り返る。2019年度に2600万円だった寄付は、2020年度には1億6700万円に増加した。

コロナ禍でいち早く行った新宿都庁下での食糧配布・相談会は、訪れる人の増加から貧困問題の悪化を「見える化」し、国会でのもやいの政策提言には、多くの共感や関心が向けられた。

奇しくも団体がコロナ禍前に目標としていた「貧困問題に関心のない人へのアプローチ」は大きく前進する形となったが、孤立解消のために行っていたカフェや学習会などの交流事業は縮小した。

コロナ禍の収束が見通せない社会状況で、もやいは医療関係者と作成した独自のマニュアルをもとに、徹底した感染対策と貧困支援の手を緩めない活動を両立している。

自立生活サポートセンター・もやい(東京都)

■病院内教育に制限、オンライン化進める

長期入院・療養を受ける子どもたちの学習を支援する認定NPO法人ポケットサポート(岡山県)は、「オンライン化が子どもたちの追い風となり、より前に進んだこともあった」という。

コロナ禍において対面学習が大きく制限され、今でも病院内での活動は再開されていない。その中でポケットサポートは助成金を活用してオンラインの学習環境、職員のテレワーク環境や情報共有の仕組みを整えてきた。

オンライン交流会ではこれまで会うことのなかった入院中・自宅療養中の子どもたちがつながり、YouTubeのライブ配信では沖縄県からの視聴者もいる。さらに教育・保健所・慢性疾患の専門家など多職種のネットワークをつくり、支援の輪はコロナ禍前以上に広がっている。

ポケットサポート(岡山県)

■福祉の現場では急速な変化が求められた

在宅介護や学童保育など福祉の現場では、国の基準や利用者の要望に対応するスピード感が求められた。

NPO法人りんりん(愛知県)はコロナ対策委員会を立ち上げ、事業継続のためのBCP(事業継続計画)を制定。学童保育では保護者が安心できるよう連絡体制のスピードアップを図ることで、事務作業の軽減にもつながる良い点もあった。

「福祉制度の法改正にコロナ禍が加わって、事業変更を何回も行ってきた。中長期の目標は今は立てられていない」と語る。

りんりん(愛知県)

新型コロナウイルスは支援の現場を直撃し、NPOは臨機応変な事業変更を強いられた。オンライン化は新たな受益者とつながるきっかけになり、社会問題への関心の高まりは寄付の増加に影響した団体もある。

社会状況の困難さが増せば増すほど柔軟な対応が求められるNPOにとって、数年後の目標を見据えて中期計画を策定することは難しい。

hieirisosshikihyoukasenta

公益財団法人 日本非営利組織評価センター

日本非営利組織評価センターは、NPOの組織評価を行う日本で初めての第三者審査機関です。  グッドガバナンス認証マークはNPOの「信頼の証」。財務が健全である、労務管理は法律に準拠している、不正を防止する仕組みがあるなどの視点に基づく審査を行っています。SDGs達成に向けた協働先、社員のボランティア参加先にもおすすめです。

執筆記事一覧
キーワード: #NPO

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..