記事のポイント
- 日本の野鳥の肺からマイクロプラスチックが検出される
- 見つかったマイクロプラスチックは、日本の都市大気中のものと一致した
- 風などによる摩擦で微細化した人工芝も大気に浮遊している可能性がある
日本の研究グループが野鳥の肺から大気中のマイクロプラスチックを検出した。国内都市の大気中で見つかるマイクロプラスチックと種類が一致したという。一部の野鳥はプラスチックをエサと一緒に食べるだけでなく、呼吸によっても吸い込み、肺まで取り込んだとみている。野鳥の肺からのマイクロプラスチック検出は世界で初めて。研究は今月、科学誌『Chemosphere』に掲載された。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
■野鳥の肺に日本の都市部のマイクロプラ
研究は日本獣医生命科学大学、早稲田大学、パーキンエルマージャパン(東京・港区)が共同で行った。調べた野鳥は、有害鳥獣対策のために東京湾周辺で捕獲されたカワラバト8羽とトビ6羽、および伊勢湾周辺で捕獲されたツバメ8羽だ。
その結果、カワラバト2羽とツバメ1羽の肺から6個のマイクロプラスチックが検出された。トビからは検出されなかった。
見つかったプラスチックは破片状のもので、サイズは28.0~70.5マイクロメートル(平均:43.6 マイクロメートル)。カワラバトからは食品容器や人工芝などさまざまな用途に使われるポリプロピレンとポリエチレンが、ツバメからは靴底や舗装道路などにも利用されるエチレン酢酸ビニルが検出された。これらは、日本の都市部の大気から見つかるマイクロプラスチックとも一致する。
カワラバトは留鳥で、ツバメは渡り鳥ではあるが幼鳥だったため、国内で生息していたものと考えられる。いずれも都市部に生息することから、これらの野鳥は日本の都市大気中のマイクロプラスチックを吸入したと考えられるという。
■微細化した人工芝も大気に浮遊か
プラスチック汚染を減らすために私たち消費者が気をつけるべき点について、研究者の一人である早稲田大学創造理工学部の大河内博教授は、こう指摘する。
「今回、野鳥の肺から検出されたプラスチックの起源はわかりませんが、破片状であることから、プラスチック製品が環境に放出されて微細化した二次マイクロプラスチックであるといえます。従って、屋外使用を目的としたプラスチック製品の使用をやめるか、少なくとも削減するとともに、屋内使用のプラスチックの廃棄管理を徹底することが必要ではないでしょうか」
たとえば、人工芝は海洋への流出も多いが、風などによる摩擦で微細化し、大気に飛散する可能性もあるという。人工芝のような屋外使用のプラスチック製品を減らすことは、海ごみだけでなく、大気中のマイクロプラスチックを減らすことにもつながるようだ。