サステナビリティ部員塾18期下期第5回レポート

株式会社オルタナは2023年2月15日に「サステナビリティ部員塾」18期下期第5回をオンラインで開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①国際NGOの活動を知る

時間: 10:30~11:45
講師: サム・アネスリー氏(国際環境NGO グリーンピース・ジャパン事務局長)

サム・アネスリー氏(国際環境NGOグリーンピース・ジャパン事務局長)

国際環境NGOグリーンピースは、世界55以上の国・地域で活動するグローバルな環境団体だ。「総合協議資格」を保有し、環境問題の専門家として国連での各会議にオブザーバー資格で出席し、各国政府へのアドバイスや提言を行っている。

同団体の特徴の一つに、IDEAL(理想)原則がある。IDEALとは、英語で「理想の」という意味で、Investigate (科学的調査をする)、Document(報告書、写真などの証拠をまとめる)、 Expose(公表する)、 Act(行動する)、Lobby(交渉する)の頭文字を取った言葉だ。

グリーンピース・ジャパンのサム・アネスリー事務局長は「世界中で異常気象が発生し、暮らしやビジネスにも影響を与えている。もはやビジネスと自然界を切り離して考えることはできない」と訴える。

グリーンピースは「過激」なキャンペーンを展開する団体というイメージが強いが、反対運動は全体の5%に過ぎない。根底にあるのは、「クリエイティブ・コンフリクト(創造的対峙)」という考え方だ。アネスリー事務局長は「企業をつぶすつもりでターゲットにしているのではなく、業界のリーダーが変わることで新しい基準ができる。企業に期待しているからこそ、働きかけを行っている」と話す。

クリエイティブ・コンフリクトの成功事例の一つが、大手アパレルの有害化学物質使用削減に向けた「デトックス・キャンペーン」(2011年開始)だ。中国にある工場から排出された有害物質が河川を汚染していることから、大手アパレルに有害化学物質の使用削減を求めた。その結果、日本では、ファーストリテイリングが「2020年までに有害物質ゼロ」を宣言した。

同社からは「グリーンピースの働きかけによって代替技術の開発が進み、業界変革の一端を担えた」というフィードバックもあった。

アネスリー事務局長は、「気候危機は悪化しており、人権問題にもかかわってくる。『新しい当たり前』をつくっていきたい」と語った。

事例紹介:グリーン購入ネットワーク(GPN)

時間: 11:45~12:00

講師: 深津 学治氏(グリーン購入ネットワーク(GPN))

深津 学治氏(グリーン購入ネットワーク(GPN))

グリーン購入ネットワーク(GPN)はグリーン購入に取り組む企業や行政、民間団体などで構成された全国ネットワークだ。「持続可能なアクションプログラム」の運営やサプライヤー調査など、企業の持続可能な調達の取り組み支援を行う。

スコープ3の算定へ注目が集まることなどを背景に、同団体は事業者が自社の製品、サプライチェーンにおける環境面・社会面の取り組みをセルフチェックできる「持続可能な調達アクションプログラム」を2018年から提供する。セルフチェック後は、5つの指標を用いたグラフで評価を行い、業界平均値との比較から自社の長所・短所を知ることができる。なかには経営者と現場の双方が回答して、それぞれの捉え方の違いを分析するケースもある。

回答企業の一部にはヒアリングも行い、取り組み方法や課題を聞き、ステップアップのためのサポートも行う。

「『購買力』は社会課題を解決する潜在能力を持ち、それをエシカルな方面へ舵を取ることで、持続可能な社会を構築していきたい」と深津氏は語った。

②サステナ経営検定2級試験の過去問演習と解説

時間: 13:00~14:15

講師: 木村 則昭氏(Nick`s Chain代表/株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

木村 則昭氏(Nick`s Chain代表/株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

4月23日実施のサステナ経営検定2級試験について講義を行った。過去問演習では選択式9問、記述式4問と練習問題1問を取り上げて解説した。木村氏は「合格のためのポイントはテキストを少なくとも2度通読すること」、「第7回から第9回の過去問は少なくとも1度ずつは挑戦してください」とアドバイスした。

③サステナビリティ経営時代のESG情報開示とアンケート対応

時間: 14:30~15:45

講師: 室井 孝之(株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

室井 孝之(株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

オルタナ総研フェローの室井氏から、さまざまなESG評価機関の中でも、GPIF(年金積立金管理運用独立法人)に採用されている国内株のESG指数5つ(FTSE Blossom Japan Index / FTSE Blossom Japan Sector Relative Index / MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数/MSCI日本株女性活躍指数(WIN)/S&P JPXカーボン・エフィシェント指数)と、CDP、S&Pダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックスについて、それぞれの評価の仕方や項目、さらには各指標で高評価を受けている日本企業などについて講義した。

こうした評価機関は企業の公開情報は定款も含め、ほぼ全てをきめ細かく収集して参考にしている。その一方で、高評価銘柄として伊藤忠商事とKDDIの2社はFTSEでもMSCIでも名が挙がるが、FTSEではほかにアサヒグループHD、コニカミノルタ、コーセーが、MSCIではほかにソニーグループ、富士通、SOMPO HDに高評価がつくなど、それぞれのインデックスでの高評価企業は顔ぶれが異なっており、相関もあまり見られないことから、非財務情報の評価の難しさが窺えるとコメントした。

しかし、いずれの高評価企業も、サステナビリティの取り組みには相応の蓄積があり、5つのESG指数(国内株)の投資パフォーマンスはTOPIX平均を上回っていることからも、企業は、投資家などのステークホルダーに正しく価値を理解、評価してもらうために、トップのコミットメントも含めたサステナビリティ情報の開示が重要だと述べた。また、各インデックスに組み入れた企業については毎年6月、12月に公表されるが選定した企業に個別に連絡は来ないため、企業側から随時その公表内容を確認するとよいとのアドバイスもあった。

企業事例:日立製作所のサステナビリティ戦略

時間: 16:00~17:15

講師: 増田 典生氏(株式会社日立製作所 サステナビリティ推進本部 主管/一般社団法人ESG情報開示研究会 共同代表理事)

1910年創業の日立製作所はITなどを駆使した「社会イノベーション事業」を展開する。2008年のリーマンショックで、約7800億円の赤字を出し倒産の危機を迎えたが、事業ポートフォリオを「社会イノベーション事業」に組み替え、以降、堅調に売上高を伸ばす。2021年度の売上高は10兆2646億円に及ぶ。

社会イノベーション事業とは、社会・環境課題の解決と人々のQuality of Lifeの向上の両立を図る事業を指す。増田氏は、社会イノベーション事業について、「収益と持続的成長の源泉」と説明した。

こうした考えを基盤にサステナビリティ戦略を定めた。具体的には4本の「柱」からなる。1本目は、社会イノベーション事業で新たな社会・環境価値を創出することだ。二つ目が、ネガティブインパクトの可視化と事業リスクの見える化だ。

3つ目は、投資家向けの情報開示で、最後が中継へのサステナ戦略の反映だ。

これまでの主な取り組みとしては、2017年度に主要事業とSDGsの紐づけ、2019年度にESGに特化したIR説明会を開いた。2021年度にはScope1,2,3でのカーボンニュートラルを2050年度までに達成すると宣言した。

講義では、経営・事業戦略とSDGsをどう紐づけたのか。社内関連部署とのディスカッション、欧州での有識者ダイアログ、サステナビリティ戦略会議での議論を話した。

事業インパクトを表す「ロジックモデル」の説明や財務と非財務の関係性の可視化に取り組んだ検証結果についても説明した。

susbuin

サステナ経営塾

株式会社オルタナは2011年にサステナビリティ・CSRを学ぶ「CSR部員塾」を発足しました。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として新たにスタートします。2011年以来、これまで延べ約600社800人の方に受講していただきました。上期はサステナビリティ/ESG初任者向けに基本的な知識を伝授します。下期はサステナビリティ/ESG実務担当者として必要な実践的知識やノウハウを伝授します。サステナ経営塾公式HPはこちら

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