12年の積み上げを3カ月で覆す、政府が決めたGXの問題点

日本政府は2023年2月10日、グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議で了承した気候変動対策として、原発を最大限活用する方針*を閣議決定しました。東京電力福島第一原発事故後、原発依存から脱却するとしてきた方針が、180度、真逆になってしまいました。

具体的な問題点を指摘した市民団体の会見からポイントを紹介します。

■議論はたった3カ月

今回の決定の要点は主に下記のようなものです。

  • 今後10年間で官民合わせて150兆円の投資を促す
  • 原子力やほとんど排出削減効果がない化石燃料火力を推進
  • 原発再稼働の推進、運転時間の延長、そして次世代革新炉による建て替えを進め、1997年完成予定だった再処理工場竣工に注力

これは、2011年3月に発生した東京電力福島第一原発事故を教訓として、原子力依存度を低減し、新設や建て替えはしない、運転期間は原則40年としてきた方針を大きく変更するものです。

岸田首相が原発の最大限活用を表明したのは2022年8月。

2021年のエネルギー基本計画とまったく異なる方向にもかかわらず、わずか3カ月の議論で決めていいものでしょうか。原発を推進しながら化石燃料産業を温存すれば、高いコストの国民負担を強いることになります。

■GX実行会議とは

福井県にある関西電力の高浜原子力発電所。1、2号機は運転開始から40年を超え、3、4号機も30年を超えている(2016年3月)

この会議は、化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革の実行を目指すもので、2022年7月から始まり、これまで5回行われています。ここで決められた方針に対するパブリックコメントの募集を経て、次期通常国会に関連法案が提出されます。

大きな論点とされたのは以下の2つ。

  1. 日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策
  2. それを前提として、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後10年のロードマップ*

最優先課題は「エネルギーの安定供給」であるはずですが、決定した方針ではなぜか原発を最大限活用することに重点が置かれ、化石燃料への依存も維持されることになっています。再生可能エネルギーの導入も含まれてはいますが、予算は150兆円のうち31兆円と全体のわずか20%程度に留まっています*

*以下2022年12月21開催「政府のGXで未来が守れるか 緊急オンライン共同記者会見」(主催:「わたしのみらい」プロジェクト、原子力市民委員会)より一部抜粋

東京電力福島第一事故以降、積み上げてきた原子力利用のあり方を根本から覆す

東京電力福島第一原発。2011年3月14日撮影。

*松久保肇さん(原子力資料情報室)のお話から抜粋

「原発政策は2011年の東京電力福島第一原発事故を受けて、原子力規制委員会を発足させました。原発の運転期間制限を導入し、政府は原発の新増設を考えていないと繰り返し表明してきたわけです。将来的に原発がなくなることが既定路線だった。

ところが今度は、原発の運転時間を延ばす、そして運転期間は経産省が決定できる、新しい原発を建てることを考える方針への転換が、今回のGX実行方針になります。

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

グリーンピースは、世界規模の環境問題に取り組む国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開しています。本部はオランダにあり、世界55カ以上の国と地域で活動し、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に、グローバルで連携して取り組んでいます。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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